
糖尿病と尿の関係を徹底解説!泡や尿糖で診断できる?
■尿はこうして作られる
人間の身体は、栄養分を入れることと余分なものを排泄することで成立しています。
当たり前のように排泄する尿は、腎臓で作られます。この腎臓や尿が糖尿病と深く関わり合いを持っています。
腎臓では一日におおよそ200リットル近い原尿を作り出します。つまりそれだけの血液が毎日腎臓を通過するということです。
ここで、腎臓の仕組みをお話いたしましょう。
食べた物、飲んだものが血液になります。その血液の中には体にとって必要なものと不要なものがあるため、腎臓でふるい分け(ろ過)されます。
身体に必要なものはタンパク質や赤血球、余分なものはクレアチニン(毒素)やナトリウム、カリウムです。
不要となった成分を含んだ水分が尿となって腎盂を経過して、体外に排泄されるという仕組みです。
排泄されるおしっこの量は正常では、おおよそ1.5リットルとなりますが、糖尿病ではこのおしっこの量や成分に変化が現れます。
■尿検査
尿の中の成分を見ることで、病気がある場所、病気の原因などが判断されます。
尿中の成分の有無は数字もありますが、次のように表記もあります。
・(-):異常なしと判断
・(+):尿中に出ていると判断
・(++)または(2+):尿中に多く出ていると判断
・(+++)または(3+):尿中にかなり多く出ていると判断
<尿たんぱく> 腎臓病、膠原病、糖尿病の判断
<尿糖> 糖尿病や腎臓の機能を判断
<尿潜血> 腎臓、尿管、膀胱、などの炎症や結石、腫瘍などの判断
<ウロビリノーゲン> 胆のう、肝臓の病気の判断
■尿糖が(+)になる理由
尿中に糖が(+)であると「糖尿病」と決めつけでしまいそうですが、実はそうではありません。
尿糖が陽性となるのは、血液の中の糖の量が多すぎて一定のインスリンでは処理しきれず、腎臓にいきます。腎臓ではろ過や再吸収の工程でもあふれてしまい尿に残ってしまう結果のものです。
尿糖(+)になる基準(糖排出閾値)は血糖が160~180mg/dL以上と言われています。
しかし糖尿病でない人でも、腎臓の再吸収などの処理機能が低下する「腎性糖尿」、
食後の血糖が上がる「甲状腺機能亢進症」などの病気を抱えた人は尿糖が陽性になることがあります。
またホルモンバランスを崩したり、ストレスの蓄積など環境条件によっても陽性を示すことがあると言われます。
尿糖とは?
尿糖とは血液中の糖が尿中に排泄された糖をいいます。血液中の糖は、腎臓で血液から濾過される途中で身体に再吸収されますが、血糖が異常に増えて限界を超えると、尿糖として検出されます。
血糖値が160~180mg/dlを超えると尿に糖がでてくるといわれています。
■尿糖と血糖の違い
血糖値は血液検査などで採血した時の血液中のブドウ糖の濃度を表した数値です。
採血した時間や食事内容、運動などによって、常に変化します。この変化の中で、血糖値が180mg/dlを超えると尿に糖が出ますので、尿糖はおしっこから次のおしっこまでの間に起こった高血糖を反映します。
尿糖チェックを行った場合、おしっこから次のおしっこまでの高血糖の状態を知ることができます。例えば食後の尿糖を測定するときには、食事直前に一度おしっこし、さらに食後のおしっこを測ることで、食後の高血糖状態があったかどうかがわかります。
糖尿病による頻尿。その尿量は?
頻尿と言われる基準は一日に8回以上の排尿です。
糖尿病では頻尿になる傾向にありますが、これには二つ原因があります。
■糖尿病による「のどの乾き」によって起こる頻尿
血液内の糖分量が増えると、血液全体はドロドロとした粘度の強い状態になります。
自分の意志とは別に身体のなかでは、糖分を多量に留めておいてはダメなことをキャッチし、尿と一緒に排除するように発令します。そのため喉の渇きを感じさせ、水分を補給させるのです。
飲水量の増加に伴う頻尿です。
■糖尿病の「神経障害」によって起こる頻尿
通常は150~200ml程度の尿が膀胱内にたまると尿意を感じます。
しかし糖尿病の場合は、高血糖により発生したソルビトールが正常な神経の伝達を阻害してしまいます。
そのため、排尿するタイミングでもないのに、脳からの排尿命令が出てしまいます。結果、頻尿となるわけです。
■どれくらいの尿量が適正なのか?
おしっこの量が多い状態を多尿といいます。1日の尿量が3000ml以上に増えた場合に多尿だと疑うこととなります。
一般的に、健康な方の尿量は、およそ1000ml~2000ml程度。多尿では、おしっこの頻度が多い頻尿と同じようにトイレに行く回数が増えますので、多尿と頻尿の区別が難しい場合もありますが、1日の尿量をためることで多尿と診断されます。また他の症状としては、口の渇きがあり、多く水分をとることで多尿となることがあります。
糖尿病では尿も甘いニオイを放つ
糖尿病によりインスリンの働きが十分になされないと高血糖が続く=細胞にぶどう糖が取り込まれない。
この状態が続くと肝臓に貯蔵されていた脂肪が糖の代わりにエネルギー源となります。
この時に燃えカスとなって出るのが「ケトン体」と呼ばれるものです。
このケトン体が、尿中に排泄されることで、尿がアンモニアと甘いニオイが混合したようなニオイになります。
しかし、この甘いニオイが感じられるようになると糖尿病はかなり進行した段階になります。
糖尿病だと尿が泡立つ?
■尿が泡立つ理由
おしっこをした後に、便器の中で細かい泡がなかなか消えない状況に不安を覚える人もいるかもしれません。糖尿病の人では、こういった尿が見られる場合がありますが、原因はタンパク質です。
しかし、糖尿病の既往が無い人でもおしっこに泡が立つことがあります。
尿の検査項目にもある「ウロビリノーゲン」の界面活性機能にまつわるものです。
■糖尿病で尿の泡立ちは合併症の警報
前述のとおり、泡の原因はタンパク質です。
尿中にタンパク質という大きな成分が出るということは、糖尿病の合併症である糖尿病性腎症が考えられます。
高血糖によって血管にも負担をかけ、また血管を傷つける物質が生まれ、血管壁がボロボロになります。
血管がたくさん集まっている腎臓では、ろ過や吸収機能が低下してしまい、網目から必要な物質がこぼれ落ちてしまいます。これを「糖尿病性腎症」といいます。
尿の異変にはどう対処する?
尿に糖やタンパク質などが出るということは、全てが血管の損傷が元となっています。
また血管の損傷原因は糖尿病が大きく関わっています。
いずれにしてもおしっこを何とか改善しようということではなく糖尿病の血糖コントロールが重要となります。
糖尿病でない人にとっては、何かの検査で尿糖が陽性となってしまったら一過性と安心するのではなく、それをきっかけに検査を追跡するとか、健康を意識するなどのきっかけにすることが重要と思われます。
健康を維持するためには、まずは身体の現状を知ることから始まります。