2023年9月26日

【糖尿病基礎知識】高齢者の糖尿病

やはり年齢とともに増えてくる糖尿病。 高齢になるにつれ危険度もましてきます。 今からできることはなんでしょう?

高齢者に糖尿病は多いのですか?

年齢とともに糖尿病になる頻度は高くなります。その原因として、年を重ねるとインスリンの分泌が少なくなる一方で、分泌されてもインスリンの働きが悪くなる、ということがいわれています。
高齢の糖尿病患者さんの特徴をみてみましょう。高齢になると全身の動脈硬化の進行が加速しますので、それに関連した高血圧、脂質異常症(高脂血症)などの病気をひとりでいくつも抱えている人もめずらしくありません。また、網膜症や神経障害などの糖尿病合併症も多くみられます。
糖尿病はもともと自覚症状がでにくい病気なのですが、高齢者の場合、身体機能が低下しているので、さらに自覚症状に乏しくなります。また、異常があっても年齢のせいにして見すごしてしまうこともあるので、動脈硬化の進行から糖尿病の合併症がかなり進んでいることがあります。
したがって、血糖値やHbA1C(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)などの血液検査のほかに、眼底や動脈硬化などの定期検診を行って、糖尿病を管理していくことが大切です。

足のチェックは毎日忘れずに

糖尿病の発見が遅れたり、血糖コントロールが悪い状態が長く続くと、神経障害や血流障害が起こって、神経や血管の末端である足にできた靴ずれや、小さな傷の痛みが感じにくく、傷が化膿しやすくなります。そのため、そこが悪化して壊疽(えそ)を起こすことがありますので、糖尿病神経障害のある人は異常がないか、毎日足をチェックする必要があります。

網膜症や白内障などで、すでに視力が低下している人は、家族や身近な人にまめに足をチェックしてもらいましょう。

糖尿病の人は認知症になりやすいと聞いたのですが・・・

わが国の研究からは、糖尿病の人はそうでない人に比べて、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症になるリスクが高いことがわかっています。
またアメリカの研究では、HbA1C(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)が1%上がると認知機能が明らかに下がるということが示されています。
糖尿病は自覚症状がでにくい病気ですから、それまでは気づかず、高齢になって認知症だと思い受診したら糖尿病であることがわかったという患者さんもいらっしゃいます。
大きな血管(大血管)や小さな血管(細小血管)の合併症予防だけでなく、認知機能の維持の点からも、血糖コントロールが大切です。もし、糖尿病の患者さんが認知症を発症すると、家族による介助だけではなく、訪問看護などによる服薬管理やインスリン注射を必要としますので、より大きなケア体制が求められます。

高齢者と糖尿病

https://www.dm-town.com/oneself/howis04.html

年齢とともに糖尿病になる頻度は高くなります。その原因として、年を重ねるとインスリンの分泌が少なくなる一方で、分泌されてもインスリンの働きが悪くなる、ということがいわれています。

個々の患者に合わせて安全・効果的に 血糖をコントロール

 日本糖尿病学会と日本老年医学会は「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標値」(HbA1c値)を発表した。
第59回日本糖尿病学会年次学術集会
知っておきたい糖尿病と認知症の「危険な関係」 認知症を防ぐために
「サルコペニア」「骨粗鬆症」に食事と運動で対策 筋肉と骨を鍛えよう
インスリン療法は早期に開始してこそ効果あり 低血糖を抑える製剤も
糖尿病の飲み薬の特徴を知れば安全・効果的に治療できる
日本食で健康長寿を延ばせる 世界に「スローカロリー」を発信
高齢者の糖尿病の目標が決定 低血糖を避けながら血糖コントロール
「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標値」を発表 日本糖尿病学会など
 今回発表した目標値は、2013年に日本糖尿病学会が発表した「血糖コントロール目標」(熊本宣言2013)をさらに深化させ、65歳以上の高齢者について、よりきめ細かく目標を設定したことが特徴となる。
 高齢者を年齢や健康状態、治療内容などで区切り、個々の患者に合わせて安全かつ効果的に糖尿病の治療を行えるよう工夫されている。

 目標では、日常生活動作(ADL)レベル、認知機能、薬物療法の内容などによって7.0%未満~8.5%未満のきめ細かなHbA1c目標値を策定。重症低血糖のおそれのある薬剤を服用している患者では「下限値」も設定された。
 「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」基本的な考え方は、以下の通り。

(1) 血糖コントロール目標は患者の特徴や健康状態:年齢、認知機能、身体機能(基本的ADLや手段的ADL)、併発疾患、重症低血糖のリスク、余命などを考慮して個別に設定すること。

(2) 重症低血糖が危惧される場合は、目標下限値を設定し、より安全な治療を行うこと。

(3) 高齢者ではこれらの目標値や目標下限値を参考にしながらも、患者中心の個別性を重視した治療を行う観点から、表に示す目標値を下回る設定や上回る設定を柔軟に行うことを可能としたこと。

高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)

治療目標は、年齢、罹病期間、低血糖の危険性、サポート体制などに加え、高齢者では認知機能や基本的ADL、手段的ADL、併存疾患なども考慮して個別に設定する。ただし、加齢に伴って重症低血糖の危険性が高くなることに十分注意する。

低血糖が高齢者の血糖コントロールの障害になっている

 高齢者糖尿病の治療に大きな影響をおよぼす要因のひとつは低血糖だ。高齢者では肝・腎機能の低下によって薬物の代謝が遅延しているだけでなく、低血糖の自覚症状が軽微で、合併する神経障害をはじめとする種々の疾病の影響でさらに症状が出にくくなっている場合がある。
 高齢者の低血糖で重症合併症を併発しやすい要因としては、長期罹病、重症低血糖の既往、動脈硬化の進展、血糖コントロールの不良、自律神経障害の合併などが知られており、高齢者では1回の低血糖でも極力避けるべきだという。
 特に経口血糖降下薬のなかでも強い血糖降下作用をもつ「インスリン製剤」「SU薬」「グリニド薬」を使用する際には十分な配慮が必要となり、単独使用では低血糖の少ないDPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬でも、SU薬と併用する場合は注意を要する。

高齢者の低血糖は重症化しやすい

糖尿病有病者の数は950万人。糖尿病は高齢者に多く、60歳代の3割以上、70歳以上で4割前後が、糖尿病またはその予備群だ。治療の基本は血糖値の上昇を抑えることだが、高齢者の糖尿病治療では特別な注意が必要となる。
 日本糖尿病学会と日本老年医学会は合同委員会を設け、高齢者が目指すべき血糖コントロールの目標を定めて、5月の糖尿病学会の年次学術集会で発表した。
 一般成人の目標は、過去1~2ヵ月の血糖の状態を示すHbA1c値が「7.0%未満」だが、これに対し高齢者では、健康状態や使用している薬の種類に応じて、目標となるHbA1c値が「7.0%未満」「7.5%未満」「8.0%未満」「8.5%未満のいずれかになる。

高齢者が低血糖を起こしやすい理由

高齢者は低血糖を起こしやすいことが知られている。薬を分解する肝臓の機能や、薬を排出する腎臓の働きが低下しているため、血糖値を下げる薬が想定以上に効いてしまうからだと考えられている。
 高齢者は低血糖が重症化しやすい。加齢で自律神経の働きや認知機能が低下していると、低血糖の症状を自覚しにくい場合がある。
 加えて、高齢の糖尿病患者は動脈硬化が進行していることが多い。重症の低血糖は心筋梗塞や脳梗塞の発症原因になる。実際に上記の研究では、HbA1cが低い人ほど死亡率が上昇する傾向があることが示された。
 さらに、低血糖により意識障害や昏睡、転倒や骨折の危険性が高まる。また、重症の低血糖は脳に障害を与え、認知機能の低下にもつながる。これが寝たきりの原因になるおそれがある。

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