特に注意!糖尿病患者さんの血圧管理方法

糖尿病患者さんは合併症が一番の敵です。 血圧の基準値や血圧を下げるための方法などを理解して、血圧の上昇を予防しましょう。

糖尿病生活と診断されてしばらくの方も、そうでない方も、皆さんはご自身の血圧値を把握していますか?
もちろん把握している方は多いと思いますが、具体的に対策をしている人はあまり多くないと思います。

ここでおさらいしていきましょう。

おさらい!血圧の基準値

あなたの血圧は正常?それとも高いですか? 血圧の正常値は、時代によって変わってきています。ほぼ4年ごとに改訂される関係機関による降圧目標血圧値は、より厳しくなっていく傾向にあります。

診察室で測定した血圧が140/90mmHg以上、家庭で測定した血圧が135/85mmHg以上が高血圧
血圧の基準として広く採用されているのが、WHO(世界保健機関)/ISH(国際高血圧学会)、米国高血圧合同委員会による分類です。

日本では、2014年4月に改訂された日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン2014」が基準となっています。ガイドラインによると、診察室で測定した血圧(病院・診療所等で医師・看護師により測定された血圧)が140/90mmHg以上、家庭で測定した血圧が135/85mmHg以上を、「高血圧」としています。

血圧の目標値は診察室では140/90mmHg未満、家庭では135/85mmHg未満
血圧の目標値は年齢や合併症によりやや異なります。40代の方では診察室での血圧が140/90mmHg未満、家庭での血圧が135/85mmHg未満が目標値です。糖尿病や慢性腎臓病、冠動脈疾患などがある方はこれよりも目標値が低くなります。

注:目安で示す診察室血圧と家庭血圧の目標値の差は、診察室血圧140/90mmHg、家庭血圧135/85mmHgが、高血圧の診断基準であることから、この二者の差をあてはめたものである。
※日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」

あなたの血管大丈夫?!血圧を下げるための3つの方法

糖尿病の患者さんの40~60パーセントが高血圧をもっているといわれ、糖尿病のある人は、糖尿病のない人に比べて2倍も高血圧になりやすいといわれています。
また高血圧の人は、高血圧でない人の2倍も糖尿病になりやすいともいわれています。

糖尿病と高血圧の関係は深く、糖尿病の治療をする際に、血糖値コントロールと併せて、高血圧を改善するよう指導されることがあります。

これは、糖尿病の患者さんが高血圧や脂質異常を併せ持つと動脈硬化を引き起こしたり、
合併症の進行を加速させたりといった危険があるためです。
特に動脈硬化は、動脈が硬く弾力性がなくなり、血管内径が狭くなることで、心臓病や脳卒中を起こすことがあるため、注意が必要です。

糖尿病と高血圧が心臓病や脳卒中に及ぼす危険性は、健康な人の危険度を1とした場合、糖尿病で2~3倍、糖尿病と高血圧があると6~7倍になります。このような致死性の疾患に進展させないためにも糖尿病の治療と高い血圧を下げる必要があるのです 。
今回は糖尿病の方が血圧を下げる実際の方法から改善がみられた方法をご紹介していきます。

とにかく減塩を心掛けた

高血圧と診断されて、高塩分な食生活を改善する指導を受けて減塩に取り組み血圧が下がった例です。

高塩分と指摘された食習慣

・漬物が好きで毎日食べる。浅漬けならばさらに醤油をかける。
・味噌汁は毎食食べる。
・めん類が好き。麺類を食べる頻度が高く、汁は飲み干す。
・かけしょうゆ、かけソースが多い。揚げ物やお刺身などの料理にはたっぷり調味料を使う。
・佃煮、干物、塩辛、明太子、梅干し、白いご飯の共に何かしら食べる。

改善策

・漬物はやめ、新鮮な野菜サラダをドレッシング控えめで食べるようにした。
・味噌汁は1日1回 減塩の味噌で具だくさんにした。
・めん類の頻度を減らし、汁は1口程度すする。
・減塩醤油に変更。調味料をかけるのではなく、決めた量を器にいれてつけて食べることに。
 物足りないときはレモンをかける、わさび、からしをきかせるなど刺激物を利用
・佃煮などの加工食品は1週間に1回程度と決めて実行。

一変した食生活に最初は戸惑い、「好きなものが食べられなくて生きている甲斐があるのか!」などと思ったそうですが、しばらくして食生活に慣れてくるとともに血圧も安定してきたそうです。
時々起こっていためまいや動悸もなくなり、現在では、「味が濃いものは食べられない!」との変わりようです。
次第に漬物や佃煮など加工食品への執着もなくなり、素材の味がよくわかるようになって食生活は満足しているとのことです。

太りすぎを解消した

徐々に重くなっていく体重。主治医の先生から太りすぎは危険であることの指導を受け、ダイエットに励み血圧が下がった例です。

ダイエットに取り組んだ食生活
朝:パンかご飯、卵、ハム、魚、納豆、野菜サラダ、コーヒー、ヨーグルト、
  夕飯の残りおかずなど
昼:外食(焼き魚定食など定食を選択、揚げ物はNG、ごはんを1/3残す)
  飲み物はお茶
夕:休肝日を週2日つくる。毎日のお酒の量は半分に減らす。
  夕食が遅くなったときはおかずの1品を朝食にまわす。
  野菜、海藻類を増やす。肉より魚や大豆製品をとる。揚げ物は週1回
  ごはんは茶碗1杯
  夕食後のスナック菓子などの間食はNG

適度な運動で血圧を下げる効果がある!

高血圧に対する生活習慣の修正として、運動も効果があります。特にI度の高血圧(140~159/90~99mmHg)であれば、薬を使わずに、運動と食事だけで血圧を下げられることもあります。適度な運動は、心臓や肺の働きを向上させ、血液の循環を促進し、継続して行うことで次第に体の各部の機能が鍛えられてきます。すると血圧だけでなく、肥満、脂質異常症、糖尿病など生活習慣病全般に対しても良い影響を及ぼします。

ウォーキング、水泳などの有酸素運動を

運動には、有酸素運動(エアロビクス)と無酸素運動(アネロビクス)があります。有酸素運動は、十分に酸素を取り込みながら行う運動で、ウォーキングやサイクリング、水泳などが該当します。一方、無酸素運動は、一瞬息を止めて力を振り絞る、懸垂や腕立て伏せ、重量挙げなどです。無酸素運動は、一時的に血圧を上昇させるので高血圧の人には危険です。高血圧の人の運動は、有酸素運動を選択しましょう。有酸素運動は、2日に1回、できれば毎日、継続して30分以上続けることが理想です。

目標は週23メッツ・時の活発な身体活動

健康づくりのための運動指針2013(厚生労働省)では、健康づくりのための身体活動量として、週に23メッツ・時以上の活発な身体活動(運動・生活活動)を行うことが目標とされました。これは、身体活動・運動と生活習慣病との関係を示す内外の文献から生活習慣病予防のために必要な身体活動量、運動量の平均を求めて設定されたものです。なお、この目標に含まれる活発な身体活動とは、3メッツ以上の身体活動です。したがって、座って安静にしている状態は1メッツですが、このような3メッツ未満の弱い身体活動は目標に含みません。
身体活動・運動の重要性については国民に普及しつつも、歩数の減少が指摘されています。さらに健康づくりのための運動指針2013では、「現在よりも身体活動量を少しでも増やす。例えば今より毎日10分長く歩くようにする」とし、個々のライフスタイルに合わせて取り組めるような表現にしました。
注:身体活動の強さと量を表す単位として、身体活動の強さについては「メッツ」を用い、身体活動の量については「メッツ・時」を用いる。
1 「メッツ」(強さの単位)
身体活動の強さを、安静時の何倍に相当するかで表す単位で、座って安静にしている状態が1メッツ、普通歩行が3メッツに相当する。
2 「メッツ・時」(量の単位)
身体活動の量を表す単位で、身体活動の強度(メッツ)に身体活動の実施時間(時)をかけたもの。
(例)
3メッツの身体活動を1時間行った場合:3メッツ×1時間=3メッツ・時
6メッツの身体活動を30分行った場合 :6メッツ×1/2時間=3メッツ・時

運動療法の前には、必ず医師に相談

運動療法開始前には必ず医師に相談するようにしましょう。特に高リスクの高血圧の場合には、心臓発作や脳卒中をおこすなど、命に関わるケースもあります。また、運動中、少しでも身体に異常を感じたら、その時点で中止して、すぐに医師に相談してください。

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