2024年1月7日

糖尿病患者さんとうつ病、その関係とは?

糖尿病患者さんの隠れた合併症にうつ病があるって知っていましたか? 目に見えない心の症状だからこそ知っておかなくてはいけない糖尿病とうつ病の関係と予防法の解説です。

糖尿病患者さんの合併症のうち、糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症は三大合併症として認知度が高いものです。しかし高血糖による血管の障害だけには留まらず、心の病気にも何らかのつながりがあるとされています。心の病気は目に見える検査結果などはないものなので、病気の特定にも、治癒までの時間も長くかかるものです。糖尿病患者さんとうつ病の関わりを知り、予防や対策に努めることも大切です。

糖尿病患者さんはうつ病になりやすい?その理由2つ

最近ではそれほど珍しい病気ではなくなったうつ病は10~15人に1人の割合で経験するといいます。なかでも糖尿病患者さんはうつ病になりやすいといわれ、患者さんの3割に「うつ症状」が見られ、「うつ病」と診断された人は1割というのが現状です。

精神的な疲労

糖尿病と診断されると癌などの衝撃とは違ったショックを受けると思います。
糖尿病の知識が豊富であれば今後の生活にどんな困難さが生じるかということで不安になり、病識がなければ食事療法や運動療法、またはインスリン管理などの指導のもとでお覚えていくことも実践していくことも大きな負担となるでしょう。

2型糖尿患者さんはどちらかというと食べることで楽しみを得ていた方が多く、糖尿病という診断名を受けてからすぐに食事制限が始まるわけですから、相当に落胆するはずです。

食事療法や運動療法を一生懸命頑張っているのに体重が落ちない、血糖のコントロールがつかないなど自分の頑張りに対して、目標としている結果がでないとなるとイラだちやストレスが増します。また責任感の強い性格ならば、自分を責めてしまうことも多々となるのではないでしょうか。

毎日の食生活に「これを食べると血糖が…」などと神経をピリピリさせることや、合併症にならないかという不安感と、隣り合わせの毎日に嫌気がさしたりすることもあると思います。
こうした葛藤や落胆、不安感の繰り返しで精神的な疲労を得てしまうことがうつ病につながる因子となります。

過剰なストレス

糖尿病患者さんは生活上、よりストレスを受けやすくなります。そのストレスがうつ病へつながるという説があります。
脳には視床下部という体の機能をコントロールする司令塔があります。ストレスが蓄積するとその視床下部に情報が流れ、視床下部から脳の下垂体という部位へホルモンを分泌しなさいという指令が発せられます。ここからホルモンとうつ病の悪循環がはじまります。
はっきりとした関連性は立証されていませんが、研究結果として少しずつ前進しているメカニズムです。

①ストレス

②脳の視床下部に情報が流れる

③視床下部から下垂体へ「ホルモンを分泌しなさい」と命令

④下垂体が副腎(腎臓の上に位置する)にホルモン分泌を命令

⑤副腎からコルチゾールが分泌

⑥コルチゾールが過剰分泌すると血糖値や血圧を上昇させ免疫力を低下させる

⑦高血糖が続くと脳のインスリン抵抗性を高めてしまう(脳がぶどう糖を吸収できない)

⑧神経伝達物質がうまく活動できなくなる、脳の海馬が萎縮する

⑨うつ病を発症しやすくなる

うつ病の予兆を知ろう

うつ病がどういった経路で発症するかということは明らかになっていませんが、脳の働きに何らかの支障が起きることによって生じるもの。またうつ病は心に病変をもたらすだけではなく、様々な病気に発展するということが怖さのひとつです。
うつ病はできるだけ早く発見することが重要となります。
うつ病の特徴的な症状をあげてみました。

体に現れる不調

▪食欲がわかない
▪甘い物を食べたくなり過食することが多くなる
▪眠れない、または何度も目が覚める
▪体が重い、だるい
▪疲れがとれない
▪頭痛、頭が重い
▪肩、背中、手足の関節が痛い
▪動悸がする
▪息苦しい

精神的にみられる不調

▪気持ちが沈みがち、朝が特に症状が重い
▪悲しい気持ちになる
▪以前は好きだった趣味などが楽しくない
▪罪悪感を感じることが多い
▪不安感でじっとしていられない
▪テレビや本を見ても面白くない
▪会話が楽しくない
▪集中力がなくなった
▪物事の判断がしづらくなった

外観に現れる不調

▪目の周り、口の周りに青白さが常時見られる
▪なんとなく首が前に曲がり気味である
▪女性ホルモンのバランスが崩れ生理不順、または女性のヒゲが濃くなる

うつ病から糖尿病にも影響はある

糖尿病患者うつ病になると糖尿病にも大きな悪影響を及ぼします。
意欲の低下が起きますので生活の質が低下します。食事のコントロールに無関心になったり、運動することを始めとして、活動的にふるまうといった行動が激減します。この二つだけでも血糖のコントロールがつかなくなります。
インスリン注射や内服薬など時間厳守とした治療にも従う意志がなくなり、薬剤でのコントロールも不可能となり、合併症を起こす方向に進んでしまうというわけです。

うつ病予防のポイントは「セロトニン」

うつ病にならないための予防薬はありません。ストレスをためない、毎日の生活にハリを持つことが大切ですが、漠然とし過ぎて正直難しいことです。そういった中で脳の伝達物質のひとつ「セロトニン」を増やすことが予防のひとつと言われます。セロトニンに注目した予防法をご紹介いたします。

食事

セロトニンを作り出す原料が「トリプトファン」という物質です。トリプトファンが多く含まれている肉類、チーズ、牛乳、納豆、豆乳などの豆製品を多く摂りましょう。そればかりに集中してしまっては効果がうすくなりますので、それらを吸収しやすくするため、合成しやすくするためにはバランスの良い食事も必要となります。
また、噛むという行為もリズム運動のひとつとしてセロトニン神経を活性化させますので、よく噛んで食べるようにしましょう。

リズミカルな運動

一定のリズムをもった運動を繰り返して行うとセロトニンが活性化されます。
難しい、過酷な運動ではなくスクワットでもかまいませんし、ウォーキング、水泳、フラダンス、ヨガ、サイクリングなどリズムを意識した運動が効果的となります。

日光

日光を浴びると交感神経もセロトニンの活動も活発になり、反動で夜にはそれが睡眠の質を上げます。しっかりとした睡眠がとれると、翌日にはセロトニン分泌が活性化するというようにプラスの循環が成立します。

コミュニケーション

家族がいる方は親子で夫婦間でまたは恋人同士で、お友達同士でもかまいませんのでたくさんおしゃべりやスキンシップを図りましょう。コミュニケーションやスキンシップはセロトニンを活性化させますし、ストレスに耐えやすい力をアップさせるといいます。糖尿病教室など糖尿病患者さんたちが集まってお話をする機会が多く見られますが、そういった機会を利用することはとても効果的となります。

血糖と一緒に気持ちのコントロールが大切

糖尿病とうつ病はつなげて考えにくいと思われます。また糖尿病患者さんのうつ病は周囲からも見逃されやすいケースとなります。
うつ病は治る病気です。早期に気が付いて治療にあたることが、血糖コントロールを維持することにもなります。日頃から食事療法だけではなく、心のコントロールも一緒に行うように心がけましょう。

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