2023年3月15日

糖尿病における「シックデイ」は軽視すると危険!

「シックデイ」という言葉をご存じでしょうか。「シックデイ」を経験する糖尿病患者さんは9割と言われますが、詳しい内容を把握している人は糖尿病患者さんの約半数という結果が出ています。シックデイとはどんなことなのか。シックデイの危険から対処のルールまでをご紹介します。

毎日一生懸命に食事や運動に気を使って血糖コントロールをしている糖尿病患者さんにとっては、体調を崩し、いつもの生活がままならないという日は不安でたまらないのではないでしょうか?糖尿病では不意の病気を受けてしまって血糖値が不安定になるため、こういった日を特別な日と判断し過ごし方に注意をしなければなりません。

「シックデイ」とはどんなことか知っていますか?

今や日本では糖尿病と診断された人や糖尿病予備軍を含めると5人に1人の罹患率となっています。糖尿病はそれほど重症には考えられない傾向にありますが、糖尿病がありとあらゆる他の病気に関与することを知ると決して軽視できない病気ですね。

糖尿病を持った人の多くは普段の生活に配慮しながら血糖コントロールをしっかり行っていると思いますが、風邪、インフルエンザ、食中毒、夏バテなどで発熱や、嘔吐、下痢などの症状が出た時、または骨折や火傷などの外傷でも病気に対するストレスが増強すると血糖値が乱れてしまいます。こういった日は十分に注意をしましょう、正しい対策をしましょうという意味を含めて「シックデイ(sick day)」と呼ばれます。

シックデイが引き起こす悪循環

高血糖

風邪などの感染症ではウイルスと自己の免疫が闘うことで体の中に炎症が起きます。それと連なって発熱があると体温が上がるため発汗がおこったり、ウイルスが消化管で増殖すると下痢や吐き気が起こります。そうなると体の中の水分が流出し、いわゆる脱水症ということになります。
脱水では血液の中がドロドロとした状態を想像すると血糖値が上昇する様子が理解できると思います。

また病気に対して体はストレスをもってしまうという機能があります。ストレスが増えるとストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの分泌が増え、グリコーゲンを糖に変えて血液内に放出します。また同時にインスリン抵抗性も高めてしまうため血糖値は上昇してしまうことになります。

低血糖

やはり体調が悪い時には食欲は落ちてしまうものです。バランスよくと普段は気を付けていてもさっぱりしたものばかりを選びがちにもなり、それでも薬だけは必要なものと通常通り内服すると血糖値が下がり過ぎてしまうことにもなります。
また脱水が起きると腎臓への負担が高まり、薬の排泄がうまくできなることで余計に薬の効果が高まってしまい低血糖を起こす結果にもなります。

ケトアシドーシス

食事が減ってしまったり、普段のインスリン注射を中止すると細胞内の糖が不足します。すると脂肪として貯蔵されていたエネルギーが糖へ変換されますが、この時にケトン体という物質が発生します。このケトン体が血液中に増えると、腹痛や吐き気、進行すると意識障害などをともなうことになります。

高浸透圧高血糖症候群

高齢の方では脱水になっても、のどの渇きを自覚しにくくなる傾向があります。脱水に加え高血糖が発生すると、浸透圧の関係で尿に水分が排泄されやすくなります。このため全身の血流が悪くなり多臓器に渡って機能が低下し、命に関わる事態を招くことにつながります。

シックデイにはルールがある

受診

38℃以上の熱が持続、または39℃以上の高熱、嘔吐や下痢、脈拍が多い、心臓が苦しい、意識障害が出た場合は即病院受診しましょう。また24時間経口摂取できない場合もかかりつけの病院か他の内科の病院を受診しましょう。
初めてかかる病院では、症状の説明とともに糖尿病であること、内服薬やインスリン注射の内容などを報告してください。

体調管理

自宅では温かくして安静を維持しましょう。仕事などを持っている場合でもできる限り体を休め、体力の回復につなげてください。

水分は意識しながらいつもより多めに(2ℓくらいを目標に)摂取し、水ばかりでななくスープなど塩分のあるものも取りましょう。
食事は抜かないように、食べやすく消化の良いお粥や麺類など炭水化物を摂取するのが良いでしょう。

2型糖尿病の人は食事がとれる状態であれば内服やインスリンはそのまま継続、1型糖尿病の人は食事量に関係なくインスリンは継続してください。

自分の状態を把握

血糖値を3時間間隔を目安に測定してください。尿ケトン体を測定できるものがあれば合わせてチェックしましょう。内服薬やインスリン注射は絶対に自己判断で量を決めないように、血糖値に不安が生じた場合は必ず医師に相談するか、病院受診してください。
血糖値が350mg/dL以上または250mg/dL以上が持続、尿ケトン体が強陽性または陽性が持続する場合はすぐに受診が必要となります。

十分に配慮が必要だからこそ

糖尿病は自己管理は当然ですが家族の協力も必要となります。糖尿病は心臓病のような突然に緊急をともなうというような病気ではありませんが、毎日のケアを必要とする繊細な病気です。十分に配慮が必要だからこそ小さな風邪なども無視せずに、「シックデイ」を認識し、対処できるようにしておくことが大切です。

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