2024年3月13日

肝がんにも発展する脂肪肝、糖尿病との関係は?

比較的重篤にならない疾患であると考えられてきた脂肪肝ですが、最近では油断できない注目すべき疾患となりました。この脂肪肝が糖尿病と関係性が高いこともわかってきています。脂肪肝とはどういう疾患でどんな関りがあるのかわかりやすく解説いたします。

そんなに肥満でもないのに脂肪肝と言われたなどと首を傾げた人もいるのではないでしょうか。脂肪肝には自覚症状もなく重症さも感じられないためそのまま放置しがちになります。しかし脂肪肝を発症する日本人も増加し重症性も明らかにされ、また糖尿病とも相互関係があるとされる注視しなければならないもののひとつになります。病気の基礎から糖尿病との関連性をしっかりと知っておきましょう。

肝臓の働き

肝臓は身体の関所と呼ばれるくらい、分解された栄養成分が収集される場所です。
肝臓の働きには脂肪の消化に役立つ胆汁をつくり出す。体内に入ったアルコールや毒物などを無毒化する解毒作用。食べ物が体のさまざまな部分でエネルギーとなるように合成したり貯蔵したりする代謝作用とさまざまな働きがあります。

代謝作用では食べ物の栄養素(タンパク質、脂質、糖質など)は腸から肝臓につながっている通路を通って肝臓へ達し、それぞれの役割を果たせるような形に変えられます。
例えばエネルギーに使われなかった糖質(グルコース)がグリコーゲンとして蓄えられるのも肝臓です。

脂肪肝とは何?判断基準は?

脂肪肝とは肝臓の細胞の30%以上に脂肪が蓄積した状態のことをいいます。体に摂りいれるエネルギーと消費するエネルギーの割合が貯蔵する方が多くなるという偏りによって生じるものです。

肝臓には栄養素を合成するために多くの酵素というものが存在しています。血液検査で肝臓の機能を示す項目では、この酵素の数を現したものが多くなります。

脂肪肝では基本的にはALT(GPT)、 AST(GOT)が50~100前後まで上昇、コリンエステラーゼやγ-GTP(ガンマ-ジーティーピー)、総コレステロール、中性脂肪などの数値も上昇します。

そのうちAST(GOT)やγ-GTP(ガンマ-ジーティーピー)はアルコールが原因の場合で肝臓の異変を現すことが多いのですが、数値がどれもそれほど高くなくても脂肪肝であることがありますので、腹部エコー(超音波検査)やCTなどの画像をもとに判断することが重要となります。

原因から2つに分類される脂肪肝

アルコール性脂肪肝

文字どおりアルコールの過剰摂取で肝臓に脂肪がたまったもののことです。
アルコールの目安は日本酒では2~3合、ビール(630ml)では2~3本、ウイスキ一(ダブル)3~4杯以上となり、この量を毎日飲用すること5年以上となります。

肝臓は解毒処理をする場所ですので、アルコールを無毒化します。しかしアルコールと一緒に摂取した栄養分の処理もしなくてはいけませんが、アルコール処理が先になるためいったん、食べた物を脂肪として肝臓にしまい込みます。これが重なって脂肪肝となります。

アルコール性脂肪肝は禁酒することで早急に改善しやすいものですが、進行していくと炎症や線維化がすすみ「アルコール性脂肪性肝炎(ASH)」へとなります。これは肝硬変や肝がんにつながる可能性が高いものです。

非アルコール性脂肪性肝疾患

アルコールは飲まない人、または少量程度の人でも生活習慣によって生じる脂肪肝です。
糖尿病を持った人の多くはこちらの脂肪肝だといわれ、以前は運動やダイエットで簡単に改善するものと思われていましたが、最近においては脂肪肝の状況に酸化ストレスが重なって「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」に移行することが明らかになってきました。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)も肝硬変や肝がんに発展する危険性が高いとされています。

糖尿病と脂肪肝は互いに刺激し合う関係

糖尿病から脂肪肝へ

糖尿病から脂肪肝へつながる理由には「インスリン抵抗性」が取り上げられます。血液中の糖質をエネルギーに変えるインスリンが不足するだけが糖尿病ではなく、インスリンの効きが悪くなることも糖尿病の特徴のひとつです。

インスリンが効きづらくなると、ぶどう糖は筋肉などに十分に摂りこめなくなるので、血液中には余ったものとして多く存在し、肝臓はそれを脂肪として再度蓄えることになります。こうして繰り返されるうちに脂肪肝を合併してしまうということです。

脂肪肝から糖尿病へ

脂肪肝を発症したからといって直接糖尿病になるというわけではありませんが、脂肪を蓄える肝臓で脂肪が一層増え続けると全身的に太りやすくなり肥満細胞が生じる原因ともなります。
また脂肪肝は肝臓だけに影響するものではなく、他の器官でもインスリン抵抗性を高めてしまい、結果として糖尿病を悪化させることになってしまいます。

脂肪肝を治す

脂肪肝を改善するのには食事制限ばかりでは代謝が悪くなり思ったほど脂肪が減らず、インスリンの感受性までも低下させてしまいます。
運動の習慣づけが大きなポイントで、1日に30分のウォーキングなどを毎日続けることで肝脂肪には大きな影響を与えるといいます。

また脂肪を落とす「HDLコレステロール」や肥満防止高血糖予防に関与する「アディポネクチン」も増加することがわかってきています。
運動をしっかり取りいれることで糖尿病にも脂肪肝にも良い影響を与えるということになります。

脂肪肝の改善は難しくない

肝臓は胃などと比較しても痛みや不快感を感じにくい場所です。また多くの機能を果たしているためいろんな方面からダメージを受けやすい部分とも言えましょう。

日本人は見た目的な肥満の人は少ないのが特徴です。しかし体重が2~3kgアップしただけで肝臓には脂肪がたまります。見た目で判断して大丈夫と思っていては発見が手遅れになる場合があります。肝脂肪は食事や運動を少しだけでも改善すると回復しやすいという有利な特徴もあります。

脂肪肝は脂肪をため込むことだけが心配されるのではなく、その先にあるガンへの発展が恐ろしいものです。
放置せず悪い生活習慣を打ち切り、良い生活習慣の継続を心がけましょう。

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