頑張る栄養くん!~脂質編③(コレステロールって悪いもの?)~
コレステロールは脂質の一種で、食品中に含まれ食事によって摂取するものと、私たちの体内でつくられるものとがあります。体の細胞膜や性ホルモンの材料になる大切な栄養成分ですが、とり過ぎなどによって体内に増え過ぎると、生活習慣病をまねくおそれがあります。
脂質の一種です。細胞膜の成分や、胆汁酸やホルモンの材料になるなど重要な働きがあるため、不足は全身の機能低下につながります。ただし体内で合成できるため、普通の食事をしていれば、まず不足することはありません。食事から摂る量よりも、体内で脂質や炭水化物などから合成される量の方が3~4倍多いのが特徴です。血液中を運ばれる方向によって、善玉コレステロール(HDLコレステロール)、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と呼ばれ、悪玉コレステロールが過剰になると動脈硬化、さらには心筋梗塞、脳梗塞などの原因となります。
■善玉コレステロール、悪玉コレステロールとして働く
コレステロールはたんぱく質と結合した形で血流に乗って体内を移動し、身体の各組織に運ばれます。「組織へ運ばれる」ものを悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と呼びます。反対に過剰になって「組織から回収される」のが善玉コレステロール(HDLコレステロール)です。悪玉コレステロールは過剰になると血管壁に入り込み動脈硬化の原因となるため、善玉コレステロールとのバランスが大切です。
■細胞膜の成分となる
私たちの身体は、約60兆個の細胞からできています。コレステロールは脂質の一種で水に溶けないという性質から、細胞内の成分が外側にもれ出ないよう、細胞の外側を構成しています。そのため不足が起こると細胞が壊れやすくなり、血管がもろくなって脳出血を起こすこともあります。
■胆汁酸・ホルモン・ビタミンの材料となる
主に 脂質の消化、吸収を助けるのが胆汁酸という消化液です。コレステロールはこの胆汁酸の材料となります。不足すると脂質の消化、吸収が低下しますが、逆に過剰になると胆石ができる原因になります。
また血圧調整やエネルギー産生に関わる副腎皮質ホルモンや、性ホルモン、ビタミンDの材料ともなります。
過剰症・欠乏症は?
■コレステロールが不足すると…
脳出血など
■コレステロールを摂りすぎると…
動脈硬化、胆石症、胆のうガンなど
コレステロールの基準値
HDL コレステロールと LDL コレステロール
私たちの体内の血中総コレステロールには、HDLコレステロールとLDLコレステロールがあります。HDLコレステロールは、血管の余分なコレステロールを肝臓に運ぶことで掃除を行い、動脈硬化を予防することが知られています。一方、LDLコレステロールは肝臓から血管や組織にコレステロールを運ぶ働きをしています。このLDLコレステロールやひいては総コレステロールが増え過ぎ、血管壁に沈着して酸化されると血管は通り道が狭くなったり、つまって切れやすくなったりしてしまいます。これが動脈硬化で、虚血性心疾患や脳血管疾患などをまねく原因となります。
動脈硬化の予防には、LDLおよびHDLコレステロール値を正常に保つことが大切です。日本動脈硬化学会の脂質異常症治療ガイド 2013 年版によると、脂質異常症の診断基準として、コレステロール血症では次の値が示されています(一部抜粋)。
どんな食べ方をしたらコレステロールが適正値になりますか
体内のコレステロールは、およそ3分の2が糖質や脂質を材料にして体内でつくられたもので、あとの残りが食べ物から直接とり込んだものといわれます。つまり、体内のコレステロールは自分でつくる量の方がずっと多く、食事からのコレステロール摂取量が直接血中総コレステロール値に反映されるわけではないと考えられています。そのため、日本人の食事摂取基準 (2015 年版)」から、コレステロール目標値の算定が削除されました。
血中のコレステロール値を適正に保つには、運動をする、肥満を予防する、喫煙をしないなどの要因が大きく影響します。そして食生活では規則正しく栄養バランスのよい食生活をすることが第一です。
自分に適した量のエネルギーをとり、栄養バランスのよい食事をとるのが大切なことです。朝食抜き、まとめ食い、夕食が遅い、といった食習慣も血中のコレステロールを乱す要因になりますから気をつけましょう。