EDとは勃起不全のことを指します。全く勃起しない、時々勃起しなかった、一時的に勃起はするが最後まで維持できなかったなどのケースより軽度、中度、重度に分けられます。EDは30代~40代により多く見られますが、20代でもめずらしくなく年々増加傾向にあるといわれます。EDの原因にはいくつかありますが、糖尿病を患っている人はEDになりやすいという結果も出ています。男性にとってEDは身体のダメージだけではなく心のダメージにもつながる大切な問題ともいえますので、EDにつながる詳細を知って問題解決の方向性を見極めましょう。

糖尿病がEDにつながる仕組みはここにある
男性の勃起とはこういう仕組み
■勃起に至るまで
①視覚、聴覚、触覚、臭覚などを通じて性的刺激として脳に伝えられます。
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②脳は興奮し脊髄の中に走っている神経を伝わり副交感神経が優位に立つことによって陰茎に作用します
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③この際に体内で一酸化窒素が放出され陰茎の海綿体に存在する血管の筋肉よりサイクリックGMPという成分が作り出されます。
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④海綿体はスポンジのような構造で動脈などの血管が多数走っています。そこにサイクリックGMPの作用によって血管が拡張し多量の血液が流れ込みます。
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⑤陰茎に硬さが生じ勃起となります。
一酸化窒素はいわば海綿体の動脈に血液を流すきっかけ、管のバルブのような役割を担います。
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⑥勃起後も脳の興奮が持続している限り、海綿体の膨張によって血液の逆流をはかる静脈が押しつぶされて血流が充満し、勃起状態が維持されることになります。
■勃起から平常に戻るまで
①勃起したままでは通常の生活は不可能ですので、体をもとにもどす働きが行われます。
脳の興奮が低下していきます。
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②実は勃起した状態の中でサイクリックGMPという物質とPDE5(ホスホジエステラーゼ)という勃起抑制酵素が存在し両者が力のせめぎ合いを起こしています。もちろん勃起しているときはサイクリックGMPが優勢になっていますが、脳の興奮が減少していくと反対にPDE5が優位となってサイクリックGMPを分解していきます。
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③海綿体にある血液が静脈を介して全身へと戻っていき勃起は解消されます。
通常のEDの原因
▪ストレス
性的刺激から始まってさまざまな器官の働きが積み重なることで勃起に至りますが、ストレスによって神経の伝達に障害が起きると性的刺激が伝わりにくいということがあげられます。副交感神経の働きが大きくなければ脊髄からの信号が末梢まで伝わらないのですが、ストレスは交感神経の方を優位にする特徴があるため、この部分が障害になるということも考えられます。
▪加齢
どうしても避けられないのは加齢によるテストステロンの分泌量の減少です。テストステロンが減少すると必要な酵素の分泌も減ってしまうため血流が不足することになります。
また血管の柔軟性がなくなるという動脈硬化からつながることも要因のひとつとなります。
▪生活習慣病から起こる高血圧などの持病
脂質異常や高血圧など血管に支障を来たす病気を発症していると陰茎の動脈の拡張や血液の流出に悪影響を及ぼすためです。
▪脳血管障害
脳出血、脳梗塞、脳腫瘍、パーキンソン病などは、刺激の収集場所であり伝達を発信する中枢部分に問題が生じると末梢への信号が遮断されるためです。
▪外傷や外科的手術の後遺症
前立腺や膀胱、直腸の疾患の手術などでは仕方なく勃起に関係する神経を切断したり、取り除くことがあるため機能が維持できません。また脊髄損傷では脳からの信号が脊髄を通るため途中で遮断される可能性が高くなります。
糖尿病はEDになりやすい?その理由は
糖尿病ではない人に比べて糖尿病を発症している人がEDになる率は2~3倍といわれます。
■糖尿病の合併症である神経障害
糖尿病には高血糖によって神経障害を起こす合併症があります。興奮刺激は感覚器から脳へ、脳から末梢へと常に神経伝達回路を利用しますので、神経が障害されていると性的刺激が鈍くなることから十分な勃起に達しないことになります。
■一酸化窒素合成酵素が不活性化する
糖尿病は高血糖によって血管の損傷がみられます。血管が損傷されると海綿体の動脈に作用する一酸化窒素合成酵素の活性化が妨げられEDになりやすくなります。
■動脈硬化
陰茎の動脈は他の部位の動脈に比べて細いため、糖尿病から動脈硬化の指摘を受けている人では血管が拡張しづらくなり勃起に必要な血液量が不足することになります。
改善方法の基本は生活習慣の改善
泌尿器科でED治療を行う際にはED薬の内服であり、ED薬のたいていはPDE5 阻害薬となります。勃起を終了させるための酵素を抑制するといった作用を行う薬ですので、原因がそういった部分でなければ薬効がない場合もあります。
糖尿病を発症しているからといって器質的に全てが糖尿病が施している物ばかりかというとそうとも言い切れません。良く調べて見ると心因性EDだったというケースも少なくありません。
そういったことから精神的にも肉体的にも安定感を持った生活習慣が必要となります。
まずは糖尿病自体の進行を防ぐため食事管理や運動の継続が大切です。
ヘモグロビンA1c値は慢性的な血糖値を表しますのでヘモグロビン A1c値を目安にコントロールしていくことがよいでしょう。