2023年12月26日

糖尿病患者さんは特に注意!脂質異常症って?

糖尿病にかかると、他の病気の事も敏感にアンテナを張ってないといけません。 その一つに脂質異常症があります。 今回は脂質異常症についてみてみましょう。

脂質異常症とはいったいどのような病気なのでしょう?

脂質異常症とは血液中のトリグリセライド(中性脂肪)やLDLコレステロール(通称:悪玉コレステロール)の量が多すぎたり、HDLコレステロール(通称:善玉コレステロール)が少なすぎたりする病気のことです。
脂質異常症自体には自覚症状はありませんが、脂質異常症を放置すると、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞のリスクを高めるので注意が必要です。

ここで改めてコレステロールについてご説明しましょう。

コレステロールとは細胞膜や、胆汁酸、ホルモンの原料になる物質で、体にとって大切な栄養素です。このコレステロールが血管などに運ばれる途中のコレステロールのことをLDLコレステロールといい、多すぎると血管壁に入り込み、動脈硬化の原因になります。

HDLコレステロールは血管壁に入り込んだコレステロールを抜き取って、肝臓に運ぶ働きをし、動脈硬化の防止をしてくれます。
また、中性脂肪は備蓄用のエネルギー源となりますが、多すぎるとHDL(善玉)コレステロールが減ってLDLコレステロールが増えやすく、結果的に動脈硬化が進みやすくなると考えられています。

糖尿病と脂質異常症の関係

糖尿病は食事から吸収したブドウ糖が血液中に溜まりすぎてしまう病気で、インスリンというホルモンが十分に足りなかったり、分泌されていてもうまく作用していなかったりした場合に起こります。

実はこのインスリンは血糖をコントロールするだけではなく、中性脂肪を分解するリポ蛋白リパーゼ(LPL)という酵素を活性化させる働きがあります。
つまり、糖尿病患者さんの場合はインスリンの影響で、中性脂肪が分解されにくい状態になってしまい、血液中に中性脂肪がたまりやすくなってしまうのです。

また、中性脂肪は糖分が原料であるため、血液中の血糖が高い状態(=糖分が多い)である糖尿病の場合は中性脂肪が作られやすいと言えます。
つまり、糖尿病は脂質異常症の進行に拍車をかけ、その結果として動脈硬化によるさまざまなリスクを更に上げてしまう危険なサイクルにおちいってしまうのです。

脂質異常症は糖尿病が原因かも

脂質異常症は、血液中に中性脂肪やコレステロールが増え過ぎてしまう病気です。これは、糖尿病が関係している場合があります。

糖尿病とは、エネルギーとして使われるはずの「ブドウ糖」が、きちんと利用されずに余ってしまい、血液中に溢れてしまう病気のこと。これは、ブドウ糖をエネルギーに変換する「インスリン」というホルモンが足りなくなったり、うまく細胞に作用しなくなったりすることで起こります。

糖尿病が脂質異常症に繋がる理由

しかしインスリンの働きは、血糖値を下げることだけではありません。肝臓での脂肪の合成を助けたり、末梢組織での脂肪の分解を促したりする働きもあるのです。このため、インスリンが不足してしまうと、末梢組織で中性脂肪が利用されにくくなり、血中に中性脂肪が増えてしまうのです。

また、中性脂肪が血中に増えることで、余分なコレステロールを回収する善玉コレステロールが減ったり、それによって悪玉コレステロールが増えたりすることもあります。

インスリンが作用せず、ブドウ糖をエネルギーとして使えなくなると、筋肉などの細胞は、代わりのエネルギーとして、細胞組織に蓄積されている中性脂肪を分解して使うようになります。

ところが、中性脂肪を分解してできる「遊離脂肪酸」は、筋肉では使い切ることができないので、肝臓に戻されて、中性脂肪やコレステロールの材料になります。また、血液中に余ったブドウ糖も、肝臓で中性脂肪やコレステロールの材料として使われます。

こうして糖尿病の人は、中性脂肪やコレステロールがどんどん増えて脂質異常症を併発し、動脈硬化を起こしやすくなるのです。

脂質異常症の種類と基準値

脂質異常症には3つの種類があります。それぞれの診断基準をみてみましょう。

1.高コレステロール血症:LDLコレステロール値140mg/dl以上
2.抵HDL血症: 40mg/dl未満
3.高トリグリセリド血症(高中性脂肪血症) :150mg/dl以上

※糖尿病患者さんのための目標値
糖尿病患者さんを対象とした血中脂質の目標値は以下のとおりです。

総コレステロール値:200㎎/dl(CHD既症者:180㎎/dl)
LDLコレステロール値:120㎎/dl(CHD:100㎎/dl)
日本動脈硬化学会ガイドライン
(LDLコレステロール値が目標に達した場合:中性脂肪:150㎎/dl未満、HDLコレステロール値40㎎/dl以上を新たな目標とする。)

糖尿病患者さんのための脂質異常症予防法

脂質は私たちにとって必要不可欠な栄養素のひとつです。しかし、摂取の量によっては身体に毒となることも。とくに糖尿病患者さんにとって脂質異常症はとても身近な病気です。脂質とうまく付き合い、脂質異常症による様々なリスクから自分の身を守りましょう。

【食事編】

・脂質のとり方に注意

脂質異常症を防ぐにはまず、脂質の摂りすぎに注意したいもの。
さらに、摂取する脂質の種類にも気を付けましょう。血中コレステロールを増やす「飽和脂肪酸」はラードやバターなど動物の脂肪に多く含まれています。
反面、脂肪のなかでも血中コレステロールを下げるものもあります。それが「不飽和脂肪酸」です。植物性の油や、魚類に多く含まれ、体内で固まることのない脂肪です。
外食や市販の菓子、惣菜などでは脂質の量がコントロールしにくい(どのくらい入っているかわかりにくい)ので、外食や惣菜に頼りすぎない食生活を目指しましょう。

ビタミン類を積極的に摂る

水溶性のビタミンC、油溶性のビタミンEはLDLコレステロールの酸化を防ぎ、脂質異常症による動脈硬化を予防する働きがあります。とくにビタミンCとEを一緒に摂るとさらに効果的。

【アルコール編】

アルコールは中性脂肪を増加させます。トリグリセリド(中性脂肪)の数値が高い人には禁酒をおすすめします。高トリグリセリド血症以外の脂質異常症持つ方も節酒を心がけ、どうしても飲みたい時には日本酒1合(ビ-ル:中びん1本、ウイスキ-:ダブル1杯、赤ワイン:グラス2杯)を限度とすることを心がけましょう。

【タバコ編】

タバコは万病のもと。タバコに含まれるニコチンは、中性脂肪の原料となる血液中の遊離脂肪酸を増加させる上、血液中のコレステロールの酸化を促進し、動脈硬化の進行を早めます。どうしても禁煙できない方には、禁煙外来など医療機関での治療もあります。自分の身体の為に、なるべく早く禁煙をはじめましょう。

【運動編】

脂質異常症には有酸素運動がもっとも効果的です。有酸素運動は体内に蓄えられた中性脂肪をエネルギー源として使い、中性脂肪を減らす効果があります。さらに、善玉コレステロールであるHDLを増やす効果も期待できます。
1日の目標はウォーキングで1万歩以上歩くこと。運動療法にウォーキングを取り入れて、血糖と脂肪の両方をコントロールしてみてはいかがでしょうか?

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