今では白内障という病気は誰もが知っている病気のひとつです。
糖尿病の三大合併症と言えば腎臓、神経障害、網膜症ですが、実は白内障を合併する率も高いことが現実です。一度白内障になってしまうと薬では改善できない怖い点がある病気ですので、早いうちから予防するためにも白内障についてしっかり知っておくことが必要です。
糖尿病から白内障?意外に知られていない関係を解説
糖尿病、白内障それぞれの病気とは
■白内障とは?
40歳を超えたくらいから発症し80代ではほとんどの人に見られるという白内障は、大きく分けると加齢による「仮性糖尿病白内障」と糖尿病が引き起こす「真性糖尿病白内障」の2種類になります。
眼玉と呼ばれる部分は水晶体といってカメラのレンズ機能と同じ作用を持ちます。この水晶体が白く濁ることで起きる症状は以下となります。
・物がかすんだり、ぼやけて見える。
・明るい場所ではまぶしさが刺さるようにまぶしい
・視力の低下
■そもそも糖尿病とは
食べた物が消化し吸収されていく段階で血液内に糖分が浮遊されます。エネルギーに変えるために膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。しかしこのインスリンが必要量だけ分泌されないという病気が糖尿病と呼ばれます。
膵臓のインスリンを作り出す細胞の破壊によって生じる糖尿病を1型糖尿病、体質や生活習慣によって生じる糖尿病を2型糖尿病と言います。
インスリンの欠乏や不足が起こると血液の中にはぶどう糖が通常よりも多く残ってしまい、それが原因となって血管を損傷し、他の多くの病気につながってしまうというものです。
糖尿病と白内障のつながりは2つ
■ポリオール代謝によるソルビトール
難しい言葉が並んでいますが、根本は血液内に多く溜まってしまったぶどう糖の処理ができないことが一つの原因です。
通常は高血糖になってもインスリンがしっかりと分泌される、またはぶどう糖を受け取る細胞が拒否しないという条件ならば、スムーズにエネルギーとして各細胞への受け渡しができるのですが、ぶどう糖が多すぎると1本の受け渡し回路では追いつかなくなります。
ポテトチップス製品工場を想像して見てください。ジャガイモがたくさんありすぎると1本の製造ルートでは約束された期限まで商品化するのに追いつきません。そこで違う製造ルートを増やして製造のスピードを上げます。しかし追加したルートでは出来上がったポテトチップスの質が違い、体にとって良くない添加物がたくさん入ったポテトチップスとなるわけです。
こういったサイクルが人の体の中では自然に行われているものです。じゃがいもをぶどう糖、増やしたルートが「ポリオール代謝回路」、添加物いっぱいのポテトチップスが「ソルビトール」というわけです。ソルビトールは細胞内に溜まりやすく、浸透圧を高くするため細胞に水がたまってしまいます。この現象が眼の水晶体で起こり、水晶体を混濁させて糖尿病白内障へと導いていくことになります。
■AGEによる「活性酸素」
もうひとつ研究段階ではありますが、原因となるものにAGEという物質が関連しているのではないかといわれています。
血液の中に溜まってしまったぶどう糖が処理しきれずにタンパク質と結合し、熱が加わりAGE(終末糖化産物)に変化します。これは体のあちこちを老化させる物質であると捉えることが良いでしょう。
例に挙げるとリンゴの皮をむいてそのまま放置すると空気中の酸素が触れることで茶色に変色します。体の中でも同じことが起きていることになります。
こうした現象が糖尿病の合併症にも影響しているといわれています。
糖尿病白内障の治療法とは?
糖尿病白内障になってしまうと自然治癒することはありません。また糖尿病白内障は比較的進行が速いと言われます。一度水晶体が混濁してしまうと血糖コントロールが成されているからと言って元通りにもどることもありません。
白内障の目薬を処方されますが、あくまでも病状の進行を遅らせる効果のものであって、治療には眼の水晶体を取り出して人工的なレンズを入れるという手術しかありません。
糖尿病白内障は予防できる?
糖尿病白内障を治す薬はありませんが、生活の中で少しでも予防となることがあれば心がけたいものです。
●血糖コントロール
糖尿病自体を悪化させては糖尿病白内障発症だけに終わるものではありません。慢性的に高血糖状態が続いてしまうことが背景にありますので、すべての合併症において必須条件となります。
●活性酸素を抑制する食品
栄養のバランスを考えた食事に、活性酸素を抑える成分を食事に摂りいれる方法も予防となります。ビタミンB2(魚介類・しそ・ほうれん草)、ビタミンC(赤ピーマン・ブロッコリー・キウイフルーツ)、ビタミンE(アボガド・アーモンド・かぼちゃ)、ポリフェノール(ブルーベリー・すもも・緑茶・コーヒー)などが良いとされます。
●紫外線対策
紫外線や蛍光灯などの光を長く浴びることで目の不飽和脂肪酸が酸化してしまい、レンズ(水晶体)の混濁を進行させます。
外を歩くときは帽子やサンバイザー、日傘、サングラスなどをかける、ライトの光などを直接見ないなど目の保護に努めましょう。
●たばこを減らすまたは禁煙
白内障になる率は、たばこを吸う人は吸わない人の3倍ともいわれます。
ニコチンやタールがビタミンCを破壊する原因となりますので、せっかく食物から摂ったとしてもマイナスになることもあるということです。
水晶体は多くのビタミンCを含みながら働いています。そこからビタミンCを奪っては当然、眼の病気への第1歩になります。
糖尿病白内障の有無を知ることが自己管理のひとつ
白内障は加齢に伴って発症するだけではなく、最近では若い人にも見られるケースが増えてきています。若さが武器にならないことが病気の上では多くなってきていますし、糖尿病が原因となって生じる病気も多くなってきています。血糖コントロールはもちろんのことですが、自己管理の一環として年齢に関係なく、糖尿病白内障を意識することも重要なこととなります。
気になる症状があればすぐに、また症状がなくても1年に1度程度の検診を行ってみてはいかがでしょうか。