食べ物が豊富になってきた現代では糖尿病の診断を受ける人が年々増加しています。
糖尿病が恐ろしい合併症を引き起こすことは熟知されているようですが、最近では歯周病とも大きなかかわりを持つという結果が打ち出されました。
糖尿病が悪いベースとなって病気を引き起こすことは分かっていても、まさか歯までと思う人が少なくないと思われます。
糖尿病と歯周病との関係を理解しておきましょう。
糖尿病と歯周病はお互いを傷つけあってしまう!今からのケアが大事
歯周病とはこんな病気!
食べ物を歯磨きで磨き落とせない、または糖分が多く残ってしまう事が原因で歯垢(プラーク)が発生し、細菌がその中に住み着いてしまいます。細菌が繁殖を続け、毒素を排泄しながら生き続けると歯周病になります。
歯周病は歯肉に赤みや腫れなどを起こす慢性的な炎症であり、徐々に進行すると骨を溶かしてしまうものです。
歯周病は単に歯の磨き方が原因によるものではありません。歯のケア以外にも喫煙、ストレス、食習慣、不適合な義歯、全身疾患などが進行を促すことがわかっています。
■歯周病チェック
歯周病を意識したことがない人でも、自己診断してみましょう。
3つ以上当てはまると、歯周病の可能性があります。
□ 歯ぐきが痛い
□ 歯ぐきが腫れている
□ 歯ぐきが痛痒い感じがする
□ 何もしてなくても歯ぐきから出血することがある
□ 食べたときに、歯が痛い
□ 硬いものが食べられなくなった
□ 歯が長くなった気がする
□ 強く歯磨きしていないのに歯ブラシに血がつく
□ 朝の起床時に口の中がネバネバする
□ 口臭がある
糖尿病との相関関係
私たちが食事をし、食べた物が消化吸収され血液内の放出されると、インスリンという膵臓から分泌されるホルモンによって細胞へエネルギーとして取り込まれ、残ったものは脂肪として貯蔵されます。
しかしこのインスリンが不足、または分泌しない、インスリンの受容体を低下させるといった状態を起こすことを糖尿病といいます。
糖尿病を持っていない人に比べて、糖尿病を持っている人が歯周病にかかる割合が2倍以上といわれます。
また反対に歯周病を持っていることで糖尿病を悪化させるという相互関係があるといわれます。
■糖尿病が歯周病をまねく理由
1.口が渇きやすい
唾液は食べ物を噛みやすく喉に運びやすくするほかに、口の中をきれいにする働きも持っています。
糖尿病では、尿の量も増えることから体全体の水分が不足がちになり、唾液も減ってしまい口の洗浄力が衰えるため、常在している細菌が繁殖しやすくなってしまうのです。
2.唾液が濃くなる
唾液も血液から作られるものなので高血糖の影響は大いに受けます。サラサラした唾液ではなくドロドロ感の強い唾液となってしまい、細菌が繁殖するのに喜ばしい環境になってしまうためです。
3.炎症を阻止しづらい
歯周病は慢性的な炎症ですから、免疫力が強ければ阻止できるのですが、高血糖であると血流も悪くなり白血球の働きがままなりません。すると細菌の繁殖に拍車がかかってしまいます。
4.タンパク質が変化
血液内が高血糖になると、糖質が正常なたんぱく質と結びついて性質を変化させてしまい、そこから炎症を起こしやすい物質(AGE)を作り出してしまうという作用もおこしてしまいます。
■歯周病が糖尿病悪化をまねく理由
糖尿病を持っている人の歯周病治療をしたところ、血糖値が安定した、改善したという治療例があります。
これはインスリンの抵抗性に関係していると考えられています。
歯肉に炎症が起きると、サイトカインと呼ばれる成分が生まれます。
このサイトカインが血管を移動しながら、筋肉細胞などに付着し、インスリンが細胞内へ入ってこないように邪魔をしてしまいます。その結果、高血糖が維持されてしまうわけですから、糖尿病ではない人に対しては糖尿病への移行、糖尿病の人に対しては病状の悪化を招いてしまうことになります。
歯周病の予防と対策は?
歯周病は治療も可能であり、自分でできる対策もあります。
■歯磨きの方法を見直す
歯垢を取り除こうと必死に硬い歯ブラシを使うことも、逆に柔らかすぎる歯ブラシも効果がありません。大きすぎない、毛先が曲がっていない歯ブラシを使用しましょう。
歯ブラシを鉛筆を持つような持ち方で、歯に対して45度角度で、一本一本丁寧に磨くことが大切です。
■禁煙する
喫煙することで、唾液の量がより一層不足します。また血管が収縮するため血流も悪くなったり、ニコチンが歯垢を付着させやすくしてしまいます。
糖尿病というリスクに、さらに上乗せするかのような悪影響を及ぼしますので、喫煙することが必要です。
■食べ物
甘いものを控えるようにしましょう。歯周病菌は糖分をエサとして繁殖しますので、できるだけ甘いものは控えましょう。
また夜は口の中の唾液も減り、自浄作用が弱くなりますので、寝る前の歯磨きを行った後は食べ物を口にしないように心がけましょう。
■歯ぎしり、噛みしめ、口呼吸を止める
歯ぎしりや歯を強くかんでしまうことで、歯と歯の間に隙間ができてしまい、そこにプラークが入り込んで歯周病となってしまいます。
また口呼吸が癖になっていると口の中の乾燥をまねきますので、歯周病につながってしまいます。
普段から起こる良くない癖は治すことが良いでしょう。
小さな心がけこそが大きな治療へと発展する
歯に関わる病気は糖尿病とは関係ないものと思いがちですが、歯周病も同じ体の中で生じるもの。私たちの体は血液やリンパが流れすべてつながっているものです。
小さなことも、このくらい大丈夫と思って放っておくことが大きな病気の引き金となってしまいます。また反対に、小さなことを治していくことで大きな病気を防ぐことができるということにもなります。
もしも歯周病の心配のある方は、歯科受診と身近なケアから始めることをオススメいたします。