2023年7月28日

糖尿病の低血糖。甘く見てはいけない知らないと本当に危険な話

低血糖を起こさないで安心して生活するためには、まずは糖尿病と低血糖に関する知識を持ちましょう。 特に糖尿病の方は治療を受けている中で、低血糖で危険な状態に陥ることもあります。 今回は低血糖の詳しい内容をお伝えいたします。

低血糖とはこんなこと

食事を通してぶどう糖が体内に吸収されると血管内の血糖値が上がります。
この血糖を細胞内に運ぶ働き、エネルギーの蓄積に関与するのがインスリンです。

通常ならば食後30分程度で血糖値が上がり、2時間後には平常に戻ります。
その変動範囲はだいたい70〜120mg/dlです。低血糖はこの70mg/dl以下の数値になってしまうことです。

糖尿病をかかえてない人も、糖分の過剰摂取によって高血糖から平常にもどるギャップで低血糖症状になることはありますが、軽度にて収まることがほとんどです。

しかし、糖尿病により血糖を下げる治療を受けている人は、年齢や食生活、運動量、その時々の環境などによって急激にインスリンの感受性が高くなるなどして、危険な状態までに陥ることが多くなります。

低血糖の数値と症状の程度は人ぞれぞれであること、また低血糖は糖尿病の人だけに生じる現象ではないことが言えます。

低血糖はこういう仕組みで起こる

身体の司令塔となる中枢部位であり、生きるために一番必要な場所なのは脳であると身体は認知しています。したがってぶどう糖を供給する初めの器官は脳です。

しかし、ぶどう糖が空になり血糖値が下がってしまうと重大事件なため、警報を鳴らしながらいくつかのホルモンが働き始めるのです。

体内のぶどう糖の動きと、どんなメカニズムを持って低血糖症状が現れるのか見てみましょう。

①血糖値80~70mg/dl
↓・膵臓がインスリンの分泌を減らします

②血糖値70~65mg/dl
↓・すい臓からグルカゴン、副腎髄質からアドレナリンが分泌されます(血糖を上げるため)
▪自律神経症状が出現

③血糖値65~60mg/dl
↓・成長ホルモン分泌(蓄積されているグリコーゲンから糖を還元するため)

④血糖値60~50mg/dl
↓・副腎皮質からコルチゾール分泌 (血糖を上げるため)

⑤血糖値49mg/dl以下
 ▪大脳の機能低下により意識に関わる症状が出る

低血糖症状にもいろいろ

一般的な血糖値と症状

▪70~50mg/dl:自律神経症状(空腹感、冷や汗、あくび、手の振戦、動悸など)
▪50~40mg/dl:中枢神経症状(脱力感、イライラ、めまい、冷や汗、手の振戦、無表情)
▪40~20mg/dl:大脳機能低下症状(ろれつが回らない、意思疎通困難、脈が速い)
▪20mg/dl以下:大脳機能低下症状(痙攣・昏睡状態)

自律神経症状のみの場合は、糖の補充で症状の改善はありますが、重症状が5時間以上となると意識回復が難しいか、死に至ります。

また血糖値にともなう低血糖症状が目安化されていますが、それぞれ状況によってかなり変わる部分があります。

1型糖尿病と2型糖尿病では、低血糖にまつわる内容が違う

1型糖尿病は2型糖尿病の人に比べて低血糖になる率が高く、また低血糖の自覚症状が弱い。
血糖値を下げるインスリンに対して、通常は血糖値を上げるグルカゴンというホルモンが分泌されるのですが、1型はこれが少ないため低血糖になりやすく、また低血糖状態が続くと重篤になることが多いとされています。

血糖値が下がるスピードによっても違う

血糖値は急激な下降では、発汗や体の震え、動悸などの自律神経による症状が見られます。
反対にゆっくりと血糖値が下降していくパターンでは、中枢神経による眠気、意識混濁、けいれんなどの症状が強くなる傾向があります。

HbA1cが常に高い人の場合

HbA1cが常に高い方は、低血糖を起こしやすいと言われます。
糖が血管内に常在しているとHbA1cは高くなります。
しかしインスリンは新しく食べた物の高血糖に対して分泌する物。
HbA1cの値が高いから空腹時血糖も高いと勘違いしているところに、インスリン注射の量が多すぎたりすると、急激な血糖の下降によって低血糖を起こすことになります。

無自覚低血糖

糖尿病神経障害を患っている方は、自律神経の働きが不安定になりますので、アドレナリンの分泌量が少なく低血糖になっても認識しにくくなります。
本来ならば体の変化に気づき糖の補充で改善できることも、意識を失ってから初めて低血糖に気が付くという結果になります。

知っておきたい低血糖になりやすい要因

糖尿病を持っている人

・食事量が少なすぎたとき
・食事と食事の間隔が空き過ぎたとき
・空腹時に運動や入浴でエネルギーを使いすぎたとき
・食事量は変わらないのに、食後の運動量が多くなったとき
・下痢や嘔吐症状があったとき
・アルコールを飲み過ぎたとき
・血糖下降薬やインスリン注射の量を間違えたとき

糖尿病以外で低血糖になりやすい人

▪甲状腺機能障害
高血糖になりやすく、その後の反動で低血糖になりやすい(反応性低血糖症)。

▪自律神経失調症
インスリンを調整するホルモンのバランスが崩れる。

▪膵臓の機能障害
血糖の調節がしにくい 。

▪貧血
食物からエネルギーに変えるシステム機能が弱くなって栄養不足になる。

▪胃下垂症
胃の内面に弾力性がないため消化しにくい。そのため栄養不足になる。

▪アレルギー体質
血糖を上昇させるコルチゾールが不足する。

糖尿病における低血糖予防

▪糖尿病治療中の人は、自分の血糖値と食事をはじめとした生活上の注意点をしっかり習得しておきましょう。

▪経口糖尿病治療薬やインスリン注射などは、時間や量を間違わないように管理しましょう。

▪食事と食事の間は一定に保つのがいいですが、どうしても間が長くなってしまう場合は、おやつなどの捕食を行ってください。

▪運動や仕事などがハードになった時は、いつもの食事より多めにするか、捕食を試みましょう。

▪禁酒が一番望ましいことですが、アルコールを飲む機会には、つまみ無しでアルコールは飲用しないようにしましょう。

▪日常生活では寝不足とストレスを避け、ホルモンの安定を図りましょう。

低血糖時の対策

自覚できる初期段階では糖分を経口から摂ることで、状態を改善できますが、自覚がない場合には特に、周囲の人に知らせておくことが大切です。

血糖を上げる成分はぶどう糖です。色々な糖はありますが、ぶどう糖まで分解されなければ低血糖は改善しません。
持ち歩く糖分としては、飴やチョコレートでは吸収までに時間がかかるため、「ぶどう糖」そのものを選択してください。

病院はもちろん、市販でも購入することができます。
低血糖はすぐに回復すると考えずに、命に関わる症状だということをしっかり受け止めて、生活の中でも注意していきましょう。

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