糖尿病をもつ人にとって安全かつ有効な運動療法とは?

糖尿病をもつ人にとって安全かつ有効な運動療法とは?

運動が必要です、糖尿病には運動が欠かせないなど耳が痛くなるほど聞く話しです。しかし運動の必要性やどんな効果があるのかなど運動に関することは、よく考えると疑問が出てくるものではないでしょうか。運動と糖尿病の関りを深く知ることで、より一層運動に興味を持つことにもなります。運動と糖尿病の関係の解説です。


糖尿病は膵臓における細胞の損失でインスリンが分泌されなくなる(1型糖尿病)、生活習慣が率いる原因で分泌量が減る(2型糖尿病)があります。どちらも運動療法は治療のひとつとしてあげられますが、運動がどういった効果を生みだすのか、どういった運動が一番必要なのか疑問に思う人も少なくないのではないでしょうか。
運動は単にエネルギーを消費するだけのものではなく、糖尿病以外の病気や症状の改善につながり、「老い」に対するブレーキともなりますので、善の象徴のようですね。しかし糖尿病を発症している場合には、逆に運動が状態を悪くさせることもあるというデメリットとなる場合もあります。
快適な日常生活を送るためにも運動について詳しく知っておきましょう。

糖尿病にはなぜ運動が必要なのか

インスリン抵抗性

体の中の細胞はぶどう糖を取り込むために、その橋渡し作業を行うインスリンが必要となります。糖尿病ではこのインスリンを拒否するようになり(インスリン抵抗性増大)、ますます血液内のぶどう糖が残ってしまいます。しかし運動することで筋肉量が増え、取り込み機能のシステムエラーが改善されることになります。つまりインスリン抵抗性が低くなるということです。

また内臓脂肪が原因となって増えてしまった脂肪を取り込む物質の悪玉サイトカイン(TNF-αやレジスチン)が減り、脂肪の燃焼に働きかける善玉サイトカイン(アディポネクチン)が増えます。この現象がインスリン抵抗性を低くすることになります。

急性代謝効果

運動することによって体の筋肉がエネルギーを必要とします。食後は血液の中ではぶどう糖が一気に増える機会です。このタイミングで(食後30分から2時間まで)運動すると、ぶどう糖の消費が成され、糖尿病に多く見られる急激な血糖の上昇を避けられることになります。またこの食後高血糖は動脈硬化に影響が大きいため二次的な病気の予防もできるということです。

どんな運動法が理想か

運動療法の目標としては有酸素運動を、可能であれば毎日、無理な場合でも1週間に少なくても3~5回。1回の運動時間は20~60分程度で、食後の高血糖を抑制させるには食後1時間後が望ましいでしょう。有酸素運動の基準がよくわからないという人は、心拍数が1分間に100-120回以下、ややきついなと感じる程度、運動中に人と話ができるくらいなどの目安を持っておくと良いでしょう。

有酸素運動と無酸素運動の違い

▪有酸素運動とは、体にかかる負担(負荷)が軽度から中度レベルの運動で一定時間持続できるものです。有酸素という言葉通り、呼吸することで取り入れた酸素を使って蓄えてある脂肪に化学反応を起こしてエネルギーとするものです。また有酸素運動では使われる脂肪が内臓脂肪が優先されるという研究鵜結果も出ています。
有酸素運動の効率条件に運動時間が20分程度必要だといわれます。最初に使われるのが血液の糖質や脂肪で、その後に内臓脂肪や皮下脂肪が使われるようになりますので、この境目が20分という時間となるわけです。
運動の内容には軽いジョギング、ウォーキング、自転車、縄跳び、水泳など。

▪無酸素運動とは、体にかかる負担が重度レベルの運動を短時間で行うものです。酸素を全く使用しないわけではありませんが、無酸素運動に比べると少なく筋肉に貯蔵されていた糖質(グリコーゲン)を使ってエネルギーとします。筋力を鍛える目的としては効率の良い運動方法で、消費カロリーは増えますが体脂肪の減量にはあまり効果が見られません。運動内容は短距離などの全力疾走、ウエイトトレーニングなど。

3大合併症に伴った運動

網膜症を合併している場合

軽度の単純網膜症であれば通常の運動は可能ですが、点状出血、黄斑浮腫が認められる単純網膜症や増殖前網膜症の場合は軽度の運動に留め、増殖網膜症では通常の日常生活における運動量までとなります。
網膜症では網膜の出血に細心の注意を払わなければならないので、血圧に敏感にならなければなりません。血圧の値はもちろんですが、息みや頭を大きく揺さぶる行動も避けましょう。網膜症のレベルに関わらず運動療法の内容は主治医との相談が必要です。

腎症を合併している場合

微量のアルブミン尿の検出であれば通常運動は可能ですが、蛋白尿や透析を行っている場合では検査値を確かめながらの運動設定となります。血糖コントロール目的の運動というよりは生活上必要な行動を維持できる目的や、骨量減少の防止目的として取り入れていくことが大切になります。

神経障害を合併している場合

軽度のしびれや知覚異常などでは軽い運動は可能です。中度レベルとなると、不整脈や血圧の異常などが現れれば心疾患の心配があるため、無理な進行は禁物です。また神経障害の特徴として無自覚性低血糖にも十分に注意しなければならないため血糖値の変動にも気を使いましょう。またちょっとした打ち身や傷などから足の壊疽(えそ)などに結びつきやすいため、運動後の皮膚の観察もしっかり行ってください。

どんな状況でも注意点を忘れないことが肝心

運動はある程度継続していかなければなりませんし、有酸素運動を勧められますが、実は運動量もその人の持つ条件によっても一定しませんし、有酸素や無酸素運動の境界というのも、はっきりした物はありません。運動を行う前または進めて行く段階では、必ずメディカルチェックが必要ですし、主治医との相談も欠かせないものです。

インスリン注射をしている人や血糖降下薬の内服治療をしている人では、運動による低血糖はよく知られる注意点です。しかし逆にぶどう糖の消費が少ないところに運動することで、肝臓がグリコーゲンを分解してぶどう糖を増やしてしまうため血液中が高血糖になることもあります。こういった運動にまつわる体の作用も知っておかなければ安全性も図れません。
自身の体の変化や運動の基本をおさえて効率よく運動し、血糖コントロールのみだけではなく他の病気も予防していきましょう。

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