2020年4月20日

【医師コラム】糖尿病に対して良い感情を持つこと

糖尿病という病気は「意味」の病気と言い換えることができるのかも知れません。 「糖尿病は贅沢をしてはいけない」「糖尿病になったら美味しいものを食べてはいけない」「糖尿病になったらお酒を飲んではいけない」「糖尿病の人はケーキを食べてはいけない」など、糖尿病に纏わる、もっともらしい誤解はたくさんあります。

バイオ・サイコ・ソーシャル糖尿病研究所代表 

【杉本 正毅(すぎもと まさたけ)】


バイオ・サイコ・ソーシャル糖尿病研究所所長
東京衛生病院糖尿病専門外来担当

ナラティブ・メディスンに基づく糖尿病診療を探求する内科医師。12004年10月ナラティヴ・アプローチとの運命的な出会いを契機に、2007年生物心理社会モデルに基づく糖尿病診療の実践・啓蒙をめざして『バイオ・サイコ・ソーシャル糖尿病研究所』を設立。生物医学モデル一辺倒の医療から患者の自己管理能力、食文化、ライフスタイル、人生観など個人がもつユニークネスを尊重する医療の実現をめざし、週5日の専門外来を担当する傍ら、執筆および講演活動を行っている。専門領域は患者教育であり、特に食事指導や基礎カーボカウント指導に基づく薬物療法の最適化に力を注いでいる

■糖尿病は「意味の病気」

糖尿病という病気は「意味」の病気と言い換えることができるのかも知れません。

「糖尿病は贅沢をしてはいけない」
「糖尿病になったら美味しいものを食べてはいけない」
「糖尿病になったらお酒を飲んではいけない」
「糖尿病の人はケーキを食べてはいけない」など、
糖尿病に纏わる、もっともらしい誤解はたくさんあります。

糖尿病という病気を、このように意味づけるように強制されたとしたら、
果たして患者さんは「頑張ろう!」という気持ちになるでしょうか?なる筈がありませんよね。

■糖尿病治療の極意は“おいしい生活”を続けること

患者さんの糖尿病に対する感情の大切さはいくら強調してもしすぎることはないと思いますが、
日本ではあまり強調されていませんね。

例えば、僕は糖尿病と初めて診断された方にはいつも「お願いしたいことは、
誰よりも“おいしさ”を大切にした食生活をして欲しいことです。
まずいものでお腹を満たすことだけはしないで下さい。
誰よりも“おいしさ”を大切にしている限り、この病気に負けることは決してありません。
あなたが美味しいものを、血糖値を上げずに食べるスキルを教えるのが、私の仕事です」と伝え、
料理が苦手な独身男性なら、簡単に作ることができる美味しい料理のレシピーを渡したりしています。

食べたり、身体を動かすことを管理する糖尿病は、
本を読んで知識を増やしたからと言って良くなるものではありません。
楽しくて、自分らしい暮らし、自分らしい食べ方を維持することが何より大切です。
僕は、それを糸井重里さんのコピーを真似て、
「糖尿病治療の極意は“おいしい生活”を続けることです」と伝えています。

お酒が好きな方には“適量の晩酌”も薦めています。
特に満足度の高い夕食を、家族と心から楽しむことはとても大切なことであると考えています。

適量のお酒とはビールなら500mL、ワインならグラス2杯、日本酒なら1合程度を指しますが、
僕の飲酒指導については、また別の機会に詳しくお話ししたいと思います。

■自分らしい生き方、食べ方に糖尿病治療を合わせること

人にはさまざまな考え方があります。
食べたいものをストイックに我慢してでもお薬に頼らないで頑張りたいという方もおられます。
素晴らしいことです。

しかし、そういう方ばかりではないと思います。これは個人的な意見ですが、
「糖尿病に自分の生活を従わせるのではなくって、自分らしい生き方や食べ方に、
糖尿病治療を合わせること」の方がはるかに楽しい生活が送れます。
近年、糖尿病治療薬は非常に進歩し、患者さんのさまざまな病態やライフスタイル、
個人的な嗜好に合わせたテーラーメイド治療が可能な時代となっています。

だから、そういうご希望の皆さんはぜひ自分の希望をしっかりと医師に伝えて、
自分らしい暮らしや食事を維持しながら、
良好な血糖管理を維持できるような治療を決めてもらって下さい。

そのためには「対等で何でも話し合える医師−患者関係」を構築することが必要になります。

皆さん、頑張って下さい。

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