頑張る栄養くん!~ミネラル初級編~
ミネラル(mineral)とは、直訳すると「鉱物」のことですが一般には私たちの身体を構成する元素(生体元素、生命活動に必要な元素)のことをいいます。
地球上には約100種類の元素があり、身体の約96%は炭素・窒素・水素・酸素の4元素(有機物の構成要素)で構成されていますが、その4元素以外の全ての生体元素を総称してミネラルと呼んでいます(あるいは無機物、微量元素と表現されることもあります)。
私たちの身体を構成する細胞も多種類のミネラルで構成され、代謝活動でも中心的な働きをしています。
私たちが食べ物から摂ったたんぱく質や脂質、炭水化物を利用するには、これらを「代謝」して、エネルギーや身体の構成成分といった、人間に必要な形につくり変えなければなりません。ミネラルは体に存在する元素のうち、炭素、水素、酸素、窒素を除いたもので、無機質ともいいます。代謝に重要な働きをする元素で、ビタミンとともに、3大栄養素の働きを助け、身体の機能を調節しています。そのため不足は身体全体の不調につながります。ミネラルとビタミンは、たんぱく質、脂質、炭水化物の3大栄養素と合わせて5大栄養素と呼ばれます。
■身体の機能維持・調節をする
3大栄養素の中でエネルギー源となるのは主に炭水化物と脂質で、臓器や筋肉など身体を構成する成分となるものがたんぱく質です。しかしこれらの栄養素は、食べ物として摂っただけでは働きません。
栄養素は消化や吸収、分解、合成などの化学反応によって人体に合うようにつくり変えられて初めて、利用できるようになります。ミネラルはこの化学反応を調節する栄養素です。車でいえば、たんぱく質は車体、炭水化物と脂質はガソリン、ミネラルやビタミンは車がスムーズに動くための潤滑油にたとえることができます。ミネラル不足になると化学反応がうまくいかなくなり、身体全体の機能が低下してしまいます。
またミネラルは、体内の浸透圧、水分、酸・アルカリのバランスをとり、体内を恒常的に安定した状態に維持しています。
一般に、私たちに必須のミネラルは16種類(※)といわれています。体内に多く存在する7種類を主要ミネラル、そのほかを微量ミネラルといい、主要ミネラルは体内ミネラルの99%を占めています。しかしたった1%である微量ミネラルも重要な働きをするため、欠かすことはできません。
主要ミネラル: ナトリウム カリウム カルシウム マグネシウム リン 硫黄 塩素
微量ミネラル: 鉄 亜鉛 銅 ヨウ素 セレン マンガン モリブデン クロム コバルト
※このほかにも必須性が指摘されているミネラルが多くあります。
■身体の構成成分になる
一部のミネラルは、身体を構成する成分にもなっています。たとえばカルシウム、マグネシウム、リンは骨や歯の成分に、鉄は赤血球の成分に、セレンやマンガンなどは酵素の成分になっています。
ミネラルの主な働き
カルシウムやリンが骨の材料になるように、ミネラルは身体の構成材料としてだけでなく、次のように重要な機能を担っています。
■(1)酵素活性化と代謝機能の向上
私たちの生命活動は、口から取り入れた栄養素を様々な過程を経て、身体を構成する約60兆個の各細胞内に吸収することで維持されています。ミネラルは、この代謝機能にかかわる酵素を活性化しています。
■(2)ビタミンの活性化と共同作業
ビタミンとミネラルは、共同で機能維持の働きをしています。
大きな違いは、ビタミンが炭素・水素・酸素などからできている有機物であるのに対し、ミネラルは無機物である点です。
共通点は、ともに体内で合成することができないため(一部ビタミンは合成可)常に摂取していないと不足がちになる点です。ビタミンはミネラルが不足していると効果を発揮することができず体外に排出されます。
■(3)身体のpH維持機能
私たちの身体は約pH7.3の弱アルカリ性が良好な状態で、身体を酸性に傾ける物質が入ったときにミネラルは中和する働きをします。
■(4)細胞浸透圧作用の保持・調整機能
細胞は、細胞膜を通して外部の栄養素を取り入れ、内部の不要物を排泄しています。この作用を正常に保つために、ミネラルは細胞内液と外液のバランスを調整します。
ミネラル(元素)の種類
私たちの身体を構成する元素は、総称として「微量元素」あるいは「生体ミネラル」などと呼ばれ、体内中に存在する量によりさらに4区分されています。
(1)体重1g中に10mg以上存在する元素を「多量元素」
⇒カルシウム・リン(2)体重1g中に1~10mg存在する元素を「少量元素」
⇒イオウ・カリウム・ナトリウム・マグネシウム(3)体重1g中に1~100μg存在する元素を「微量元素」
⇒鉄・フッ素・ケイ素・亜鉛・ルビジウム・マンガン・銅(4)体重1g中に1μg以下存在する元素を「超微量元素」
⇒アルミニウム・バリウム・セレン・ヨウ素・モリブデン・ニッケル・
コバルト・バナジウム・ゲルマニウム・リチウム・タングステン・チタンなど※mg=ミリグラム、μg=マイクログラム
※割合が少ない元素でも、欠乏状態が慢性化すると身体への変調をきたします。
ミネラルの供給源
私たち人間に必要なミネラルの主な供給源は、野菜・海草などの植物・水・塩です。一昔前までは、普通に生活しているだけで、食事をすれば野菜や塩に含まれるミネラルが、また水を飲めばそこに含まれるミネラルが摂取でき、身体に必要なミネラルが自然に充足されていました。現代はどうでしょうか?
■(1)野菜の現状
日本は土地(農地)が狭い上に、農業の近代化が進むにつれて単位面積あたりの収穫量を追求することになりました。さらに、多くの化学肥料や農薬の使用も収穫量の追及にはやむを得ませんでした。ところが、これらを背景にそこで育つ野菜に含まれるミネラルは急速に減少していったのです。
化学肥料は土壌に含まれるミネラル成分を減少させ、また土壌中の虫類がいなくなってしまうことと同時に土壌中の微生物相を変えてしまいました。この微生物相は、植物が根から土壌中のミネラル分を吸収する際に欠かせない存在です。農薬の使用は、土壌の悪化を招いたり農作物に残留することもあります。
同じく収穫量の追求のため、促成栽培や二毛作も行われました。植物が根から十分なミネラルを吸収するには、十分な時間が必要です。促成栽培で収穫を早めた作物は、ミネラル分も不十分です。作物栽培に使われた土壌は一時的にやせるため、回復期間として十分に休ませる必要もあります。二毛作を行うとやせた土壌を酷使することになり、当然そこで育つ植物のミネラル分は不足することになります。
加工食品においては、精製・製造段階で少なからずミネラルまで取り除かれてしまうという問題があります。また、加工食品の多くは保存性をよくするために食品添加物が加えられますが、これらはミネラルと強く結合する性質があるため、摂取したミネラルも添加物とともに対外に排泄されてしまう可能性もあります。
■(2)水の現状
本来、飲料水に含まれるミネラルも重要なミネラル供給源です。しかし、上水のもとになる河川や湖における今日の汚染は、不純物が水に溶け込んでいるミネラルと反応して不純物とともに沈殿してしまいます。また、浄水する過程で取り除かれることもあります。このようなことから、水もあまり期待できるような状況にありません。
■(3)塩の現状
1905年(明治38年)、政府は日露戦争の戦費調達を目的として、塩の専売制度を敷きました。この頃の製塩方法は、全国の塩田による「天日干し」で、食塩のみでなく海水中に含まれる種々のミネラルも含まれるため、身体に必要な微量ミネラルや超微量ミネラルも充足することができていました。
1971年(昭和46年)に、天候の影響を受けず、海洋汚染の影響も回避でき、海水の不純物を除去できる「イオン交換膜製塩法」という化学的な方法に切り替えました。この変更によって、「塩」に含有しているミネラル成分も激減してしまいました。
1997年の塩事業法成立により、5年間の移行期間を経て2002年(平成14年)に塩の製造販売が自由化され、現在市場には多くの天然塩が出回るようになりました。塩の取りすぎが良くないことは周知の通りですが、使うのであれば天然塩を使うべきです。
ミネラル不足により起こるとされる症状の例
癌・糖尿病・アトピーなどの生活習慣病をはじめとする多くの疾患(特に慢性疾患)は、本来人間がもつ免疫力や自然治癒力が食生活の変化(西洋化・加工食品増加・インスタント食品増加・食品に含まれるミネラル激減等)や現代社会がもたらすストレス(精神的・肉体的)などにより低下したことも大きな要因と考えられています。
症状からみた不足ミネラル
聞きなれないミネラル(金属元素)があるかもしれませんが、これ以外にも微量元素と呼ばれる多くのミネラルが、私たちの体を構成し・維持する働きをしています。
どれくらいとればいいか
ミネラルは、多すぎても少なすぎても健康によくありません。体に必要な量はミネラルの種類によって異なります。
【不足しやすいもの】
カルシウム
不足すると骨粗しょう症になる可能性があります。
鉄
不足すると貧血をおこす可能性があります。
【とりすぎが心配なもの】ナトリウム
とりすぎると高血圧や脳卒中などの生活習慣病の原因になります。
ミネラルの種類と多く含む食品
■ミネラルの吸収
ミネラルは、体の中では合成されないので、毎日の食事からとる必要があります。しかし、吸収されにくかったり、他の成分によって吸収を妨げられたりすることがあります。また、体内に貯蔵できないものも多いのです。一方、ミネラルの吸収を助ける働きをするものもあり、カルシウムやリンはビタミンDによって、鉄はビタミンCによって吸収が高められます。