2024年1月11日

糖尿病の原因?お酒と糖尿病の関係、上手な飲み方とは?

糖尿病患者さんは、「お酒は控えるべき」「あるいは飲んではいけない」といったイメージが強いのではないでしょうか。確かにアルコールは血糖値に影響しますが、お酒とうまく付き合っていく方法はないのでしょうか。糖尿病における血糖値とお酒の関係や、飲み方の工夫などをご紹介したいと思います。

糖尿病とアルコールの関係

アルコールには血糖値のコントロールを乱す作用があるため、一般的に糖尿病の方にとって飲酒は良くないとされています。

アルコール自体には血糖値を上昇させる作用はありません。
アルコールは1gあたり7kcalと高カロリーであるにも関わらず、体内で、ブドウ糖に戻ることがないため、アルコールのエネルギーに血糖値を上昇させる力はないのです。
しかし、アルコールそのものが、肝臓内のグリコーゲンのブドウ糖への分解を促進させる作用があるため、飲酒後は一過性ではありますが、血糖値を上昇させてしまいます。

通常、飲食などで摂取された糖質は、ブドウ糖に分解され、肝臓に運ばれます。
その後、血液を介して全身に運ばれ、エネルギー源になりますが、過剰となったブドウ糖は再び肝臓に吸収されて、グリコーゲンという物質になり肝臓に貯蔵されます。
アルコールを摂取すると、グリコーゲンのブドウ糖への分解を促進させるため、ブドウ糖は再び血液を介し体内を流れ、血糖値が上がるのです。

アルコールは膵臓を破壊しアルコール性膵炎を生じますが、一方でインスリンを分泌する膵臓の細胞もこわしてしまい、これが糖尿病の原因となります。
また、アルコールもかなりのカロリーを有している(清酒1升で約1800キロカロリー)ので、大量飲酒は過剰なカロリーを摂取することになります。
このことからも糖尿病は起こりやすくなります。

「お酒」には糖質が含まれている

注意すべきは、お酒(アルコール飲料)には糖質も含むものもあるということです。
その場合、お酒を飲むことで糖質も摂取し、血糖値が上がってしまうのです。
 ※糖質を含むお酒・・・ビール、日本酒、梅酒、ワイン、甘いカクテル
  糖質を含まないお酒・・・焼酎類(芋焼酎、米焼酎など)、スピリッツ(ジン、ウイスキー、ウォッカ、ブランデーなど)、糖質を加えないサワー類(ウーロンハイ、緑茶ハイ、ハイボールなど)

食欲も増進させる

よく言われることですが、アルコールは食欲を増進させる働きがあります。食前酒が良い例で、食事の前にお酒を飲むことで喉を潤し、アルコールが胃を刺激することで、食事をより楽しめると考えられているそうです。

低血糖を引き起こすことも!?

アルコールには低血糖を引き起こすこともあります。
食事を摂ってから長時間経過しているなど空腹時にお酒を飲むと、低血糖になる場合があります。さらにインスリン注射や血糖降下薬などによる薬物治療を行っている場合は、より低血糖を起こしやすくなるため特に注意が必要です。

適度な飲酒なら大丈夫?どのくらい飲んでもいいの?

一般的に、糖尿病患者さんにおいては “原則禁酒”と言われていますが、全ての糖尿病患者さんが絶対に飲酒してはいけないというわけではありません。

アルコール摂取が許される条件としては下記のような内容が挙げられます。

食事療法や血糖値のコントロールが良好で安定している
体重の管理が出来ている
糖尿病の合併症や、飲酒制限のある病気を併発していない
高血圧、動脈硬化を併発していても軽度のものである
飲酒量の限度を守る自制心がある

適切な飲酒量とは?

飲酒許可が出た場合、どのくらいであれば飲酒量なら飲んでも良いのでしょうか。
現在、日本の糖尿病のガイドラインには、糖尿病の方のアルコール摂取量についての具体的な数字は挙げられていませんが、1日あたり160kcal程度であれば許容範囲であると言われています。

一般的なアルコール飲料における目安量は以下のようになります。

ビール(350ml 1本):141kcal
発泡酒(350ml 1本):159kcal
清酒(140ml 1合弱):152kcal
焼酎(60ml 1杯) :118kcal
ワイン(200ml グラス2杯):146kcal
ウィスキー(30ml シングル1杯):68kcal

ビールであれば1缶
ワインであればグラスに2杯
ウイスキーならダブル程度

この辺りが許容範囲であるといえます。

物足りない…そんな時には飲み方を工夫

糖尿病の方の飲酒量は、1日あたりビールで350ml缶1本程度とされており、毎日の飲酒が習慣となっている人にとっては厳しい制限と感じるかもしれません。
1日の飲酒許容量のお酒では物足りなさやストレスを感じてしまいがちです。
そこで、お酒の代わりになるような飲み物や、飲み方の工夫などをご紹介したいと思います。

炭酸割りにしてみる!

普段ビールやサワーを愛飲している方にとっては、炭酸の爽快感を好まれる方も多いかと思います。
そこで、炭酸水(甘みの無いもの)を取り入れてみてはいかがでしょうか。
たとえば、炭酸水に梅酢を加えたり、レモンを絞って香りや酸味をつけたものなどはとても爽やかな飲み口で、暑くなるこれからの季節にピッタリです。

このような無糖の炭酸水であれば血糖値にも影響ありません。

ノンアルコール飲料を使う

特に赤ワインには高血圧や動脈硬化を予防する働きがあると言われますが、これはアルコールの効果によるものではなく、赤ワインに含まれるポリフェノールという成分によるものです。
アルコール自体は血圧降下の妨げとなるため、赤ワインよりも、ノンアルコールの赤ワインを飲んだ方が、血圧降下作用は大きいと言われています。

「糖質オフ」「カロリーオフ」「ノンアルコール飲料」などと銘打った飲料が市販されています。
特にビールや発泡酒などはさまざまな種類が販売されています。
肥満やメタボリックシンドロームを気にする方々の増加を受け、これらの飲料の売り上げは年々増加しているようです。
カロリー制限などがある糖尿病患者さんにおいても、このような飲料を活用するのは賢い手と言えます。

緑茶やコーヒーを使う

文部科学省が助成する大規模コホート研究(Japan Collaborative Cohort Study)によると、緑茶やコーヒーに含まれるカフェインが、糖尿病の発症リスクを低下させると発表しています。
この他、緑茶に含まれるカテキンの一種や、コーヒーのクロロゲン酸という成分が、インスリン抵抗性を改善するという効果があると期待されています。つまり、緑茶やコーヒーの飲用、カフェインの摂取が糖尿病の発症を減少させる可能性があることを示唆しています。
特に緑茶は焼酎などの割り物としても活躍し、少量のお酒でも楽しむことができます。

まとめ:重要なのは自制心!

糖尿病患者さんは、“原則禁酒”と言われています。それは、アルコールやアルコール飲料が、血糖値のコントロールや糖尿病そのものの進行などに及ぼす影響が大きいためです。
適量であれば飲酒の許可が出ることもありますが、これはさまざまな条件や医師の判断の下というのが大前提です。

飲酒の際には「適量をきちんと守る」という自制心が欠かせませんが、日々の食事療法や運動療法などもきちんと行って、好きなお酒をいつまでを楽しめるようにしたいものですね。

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