2023年7月17日

透析中の食事管理。治療中でも毎日楽しく食べたい!

透析中の食事管理はとても大切です。特に、水分・たんぱく質の管理は重要で、毎食バランス、摂取量を考えなければなりません。さまざまな制限などにしばられるとストレスを感じてしまいとても大変な食事管理ですが、でも食事は楽しみたいですよね。そのためにもしっかりした知識を身につけてください。

透析中の食事制限のまとめ(ポイント)

腎不全などによる透析中の食事療法ではカロリー・タンパク質・塩分・水分などに気を配る必要があります。
でもそれが大変だといってがっかりする必要はありません。それぞれの取りすぎに気をつけて、エネルギーや栄養素をしっかりと補給するための食事療法のポイントを押さえておけば、食事を楽しむことができます。

特に大事なのは、
・水分の制限
・塩分を控えること
・カリウムの制限
・リンの制限
・適切なエネルギー、良質なたんぱく質を取ること

などが透析中の食事療法のポイントです。

それでは、人工透析を行っている患者さん向けの食事管理の方法について説明をしていきます。

人工透析では、どうして食事管理が重要なのでしょう。
まずは腎臓の働きや、透析の仕組みを見ていきましょう。

人工透析導入前の腎臓の働き

腎臓の働きを整理すると以下のようなポイントにまとめられます。

■血液を綺麗に保つ

血液の老廃物を除去し、体外へ尿として排泄する

■水分やイオンバランスの調整

体内の水分量など、ナトリウム・カルシウム・カリウム・リンなどのイオンバランスを調整する。

■造血ホルモンの分泌

赤血球をつくるためのホルモンを分泌

■血圧の調節

レニンという血圧を上昇させるホルモンを産生し、血圧の調整

■ビタミンDの活性化

尿が作られる仕組み

腎臓のもっとも重要な働きは体内に流れる血液を濾過して尿をつくることです。
血液を浄化し、老廃物や水分などを尿として体外に排泄することによって、体を正常な状態に保ちます。

心臓から流れる血液の
約1/4から1/5にあたる毎分約1リットルの血液が流れ込んできます。
この血液が糸球体で濾過され、1分間に約100mlの原尿が出来ます。
原尿は尿細管と集合管で再吸収され、1mlの尿になります。
これは1日分にすると、約150Lの原尿から約1.5Lの尿が出来ることになります。
原尿から再吸収し、調整を加えて最終的な尿をつくる仕組みです。

どうして腎臓は衰えていくの?

腎臓病の自覚症状としては、むくみや倦怠感(常にだるい、疲れやすい等)
貧血、息切れ、夜間の頻尿などがあります。しかし、これ等の症状が自覚されるときにはすでに慢性腎臓病がかなり進行している場合が多く、早期発見が難しいと言えます。

いわば人工透析予備軍ともいえる慢性腎臓病は、脳卒中や心筋梗塞などの発症率、死亡率を高めるともいわれており、発症要因のひとつとなるメタボリック症候群と合わせて注意が必要です。
 となると、やはり少しでも早い時期での発見が重要になります。 そのためにも定期的に健康診断を受け、尿や血圧の検査をしましょう。特に尿たんぱくが陽性の人は要注意です。
 生活習慣やメタボリックシンドロームと深い関係があるということは、裏を返せば、生活習慣病やメタボにならないよう気をつけることで、慢性腎臓病を防ぐことができる、ということになります。
 過労や睡眠不足、ストレス、食生活の乱れや過食、運動不足、さらには過度の飲酒や喫煙といった日々の生活の悪習慣を改善することが、そのまま腎臓病対策になります。食生活では、塩分の取り過ぎや、肉類などたんぱく質の取り過ぎにも気をつけましょう。 こうしてみると、普段の生活を見直し改善することで、腎臓病は防げるということになります。 また、「最近、特に疲れやすい」などの体調の変化を感じたら、早めにかかりつけ医などに相談するようにしましょう。

-すぐに役立つ暮らしの健康情報-こんにちわ 2011年2月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

透析中の食事療法の目的

上記のように、体において腎臓はとても重要な役割をはたしてくれていました。

腎不全などで正しく機能しなくなってしまった腎臓に、身体の循環を正しく行うため、人工透析の導入が進められます。

人工透析は、摂取たんぱく質、水分、塩分などを調節することを目的としています。
しかし、あくまでも外部からの調節なので、健康な腎臓のように、100%は管理はできません・・・。

普段の食事からも調節の手助けをしていくことが大切です。

腎臓のさらなる悪化を抑制し、透析から次回の透析までの間の体調を整え、人工透析時の負担を軽減させるのが、食事療法の目的です。

透析中の食事療法のポイント

透析中の食事ポイント1:水分制限

体内の水分を増やしすぎないための水分制限が必要です。

~水分制限の工夫~
・塩分の高いものを食べると、水分を取りたくなるので、減塩食を心掛けましょう。
・食事に入っている水分は1日約1000mlと考えましょう。
・水分の多い嗜好品(ゼリー・ソフトクリームなど)や、野菜・きゅうり(きゅうり・すいか・みかん など)を摂りすぎないように気を付ける。
・麺類の汁はなるべく残す。

透析中の食事ポイント2:塩分制限

担当医や、栄養士に相談をして自身の一日の食塩指示量を知りましょう。

【参考】
健康な成人の食塩の食事摂取基準値(目標量)
男性:8.0g未満/日 女性:7.0g未満/日

血圧透析(週3回)患者の食塩制限基準値(日本腎臓学会)
6g未満/日(腹膜透析患者は尿量と除水量によって異なる)

・食品成分表で塩分量をチェックしながら調理記録や食事記録をとる。
・調理での味付けは、食材重量の0.7%程度の食塩を目安にする。
・砂糖を増やすと塩や醤油も多く使ってしまうので、甘みも控える。
・汁物を減らす。
 (1日1回、半量を1日2回…など工夫する。)
・塩蔵品より冷凍品を利用する。
・食卓に塩や醤油を置かない。
・減塩醤油や割り醤油を用いる。
・1食分の塩や醤油をあらかじめ小皿に出しておき、つけて食べる。
 同じ塩分量でも、表面に味をつけて食べる方が、味を濃く感じることができる。
・旬の食材を使い、食材本来の味を楽しむ。
 また、香り高い食材を生かす。(大葉、ゴマ、みょうが、しょうがなど)
・旨味を利用する。
 (海藻、干し椎茸、かつおぶしなどの出汁を効かしたり、肉・魚介類の加工食品を調味料として使うのも良い)
・酸味(レモン、ゆず、かぼすなど)や香辛料(カレー粉、こしょう、七味など)を利用する。
・適量の植物性の油で、美味しさをプラスする。
・和食より洋食の方が、減塩でも美味しく食べやすい。
・外食を減らす。

透析中の食事ポイント3:たんぱく質の摂取

■腎臓の負荷を軽減するために適正な量のたんぱく質の摂取と、良質なたんぱく質を摂取しましょう。

・たんぱく質の高い食材、低い食材を知る。
・食品成分表で、各食材のタンパク量を計算しながら、食事記録をとる。
・細かい計算が難しい場合は、「肉・魚80gに約15~20gのたんぱく質が含まれている」と考える。
・主菜以外にはたんぱく質系の食材は使わないようにすると、想定外の食べすきを防ぎやすい。
・野菜、きのこ、海藻類で食事のボリュームを増す。(カリウム制限がある場合は要注意)
・良質のたんぱく質(主に動物性たんぱく質)をとるようにする。(全摂取たんぱく質中、動物性たんぱく質60~70%が目安。)
・でんぷん米、でんぷん麺、低たんぱくご飯、低たんぱくパンなどの低たんぱくの治療用特殊食品を主食に用いる。

■身体タンパク分解抑制のための適正エネルギーの確保

・脂身の多い肉や魚の部位を使う。
・炒め物や揚げ物などの油を使う料理にする。
・粉あめ、MCTが使われている治療用特殊食品(高エネルギーゼリーなど)を利用する。
・低たんぱくで高エネルギーの食品をリストアップしておき、エネルギーが足りないときに利用する。
(ポテトコロッケ、フライドポテト、カレー、大学芋、チョコレート、ジャム、果物のコンポートなど)

透析中の食事ポイント4:カリウムの制限

カリウムは体の中にも、食品の中にもほとんど含まれています。

腎臓の状態が悪化すると、余分なカリウムを尿の中に捨てることができなくなるため、高カリウム血症をおこし、不整脈や心臓にダメージを与える危険性があります。

そのため、食事の中でのカリウムをできるだけ少なくする工夫が必要です。

■カリウム含有量の多い食品
果物、豆類、芋類、海藻類、野菜、種実類

■野菜は1日200gを目安にすること。
カリウムは水に溶ける性質があるので、野菜は水にさらすかゆでてから調理しましょう。
それでもカリウムを全て除去できるわけではないのでとりすぎに注意しましょう。

■果物や芋類は1日50gを目安にすること。
特にカリウムが多いバナナ、メロン、キウイは控えてください。

■缶詰のシロップは飲まない
シロップ中にカリウムが溶け出していますので、飲まないようにしてください。

透析中の食事ポイント5:リンの制限

血液中のリンが増えると、関節や血管に石灰化がおこったり、心筋梗塞や脳梗塞などが起こる原因となります。

また、リンはたんぱく質の代謝産物であり、必要量のたんぱく質を摂ろうとするとリンの値も高くなってしまいます。たんぱく価を低下させないように食品を置き換える工夫が必要です。 

■インスタント食品を控える
リンはほとんどの食品に含まれますが、特にたんぱく質の多い食品やインスタント食品に利用される食品添加物の中に多く含まれています。インスタント食品を避けるようにしてください。

■低リン食品を利用する
低リンミルク、だしわりしょうゆ、タンパク調整食品など、一般市販品に比べてリン含有量が1/3~1/5以下となるように調整されている食品があります。

■たんぱく質の過剰摂取を避ける
たんぱく質の摂取量が制限内であっても、リン含有量の多い食品に偏ったり、お菓子などをたくさんとればリンの摂取量は増えてしまいます。リン含有の多い食品をチェックしなるべく摂らないようにしてください。

透析中の食事メニュー

透析中の食事では何を食べたら良いのでしょうか?

塩分のコントロールはわかりやすいですが、特にリンの制限について考えておく必要があります。

そしてリンはたんぱく質と非常に密接な関係にあります。ほとんどすべてのたんぱく質はおよそ1%のリンを含んでいると考えることができます。体重70Kgの人が70gのたんぱく質を食べると約0.7g(700mg)のリンを摂取することになります。このリンの量はちょうど許容範囲に収まります。ですから、リンの制限はさほど難しいことではありません。基本的にはたんぱく質の摂取量を守っていればよいのです。

ところが、たんぱく質を含む食品の中には特にリンが多いものと、保存料としてリン酸を添加されているものがあり、これらを食べないようにしなければなりません。リンが特に多い食品を覚えておいて下さい。高リン食品として次の6つが重要です。

・乳製品
・卵黄
・レバー
・獣肉、魚肉加工品
・骨ごと食べる小魚
・豆類、薮そば

高リン食品はこれだけ、と言っても良いです。
乳製品とは牛乳と牛乳から作られるもので、チーズ、ヤクルト、ヨーグルト、生クリームなどが含まれます。もちろん、チーズを使うピザもやめておいた方が良いです。

卵黄は鶏卵と魚卵の黄身です(鶏卵の白身はリンが少ない良質の蛋白質で、問題ありません)。そして肝臓(レバー)は牛や豚、鶏だけでなく、内臓ごと食べる小魚・エビなどにもありますので注意して下さい。

魚肉加工品とは、干物、塩蔵物、ねり製品(かまぼこ、ハンペン、ちくわ、なると、がんもどき、つみれなど)、佃煮、瓶詰、缶詰、粕漬けなどです。防腐剤としてリン酸が添加されるためにリンが著しく増加しています。活きの良い生魚か、とれたまま、あるいは調理せずに冷凍した物を買って来て、料理するようにして下さい。

ハム、ベーコン、ソーセージ、冷凍ハンバーグなどの肉加工品も生のものよりリンが多くなっています。生のお肉を買って来て料理するようにして下さい。 豆類には小豆あん(防腐剤も入っています)も含まれます。そばは更級そばが低リンです。

透析中にそばが食べたくなったら

ツルツルとのど越しのよいめん類が欲しくなる時がありますよね。
一品ですませられる手軽さも見逃せません。塩分が多い、たんぱく調整めんはあまりおいしくない、などという声も聞きますが、いくつかの注意点を守れば、めん類のメニューも十分楽しめます。

■汁そばよりも焼きそば、つけ麺、冷やし中華を。
汁は絶対に残すようにしてください。そういった意味で汁そばよりも焼きそばや、つけ麺、冷やし中華をお勧めしますが、どうしても汁そばが食べたい場合でも、汁だけは残してくださいね。

■塩分を考えて。
レストランのパスタ類や、讃岐うどんなどは塩分が多いので気をつけてください。ざるそばなどの方がおすすめです。その時に野菜などの天ぷらを一品追加するなどしてエネルギーと栄養不足を解消してください。

■トマトや生クリームをうまく使う。
トマトには旨味成分のアミノ酸が多く、適度な酸味もあるので、上手に利用すれば、塩分制限に役立ちます。そして生クリームは牛乳より低たんぱくで、エネルギーも高いので、便利に使えます。そして旨味とコクがあり、薄味も気になりません。

透析中の食事でおやつは食べられる?

食事以外で、おやつと言えば甘いものを想像しますね。
甘いものにはたんぱく質が多く含まれていたりするので、よく注意が必要ですが、透析中の身体にはエネルギーが必要なのです。

エネルギーを上手に摂るには、高エネルギー、低たんぱくの食事をとりましょう。

そこでおすすめなのは

でんぷん』です。

でんぷんには、エネルギーがしっかりあり、タンパク質、リン、カリウムが少なく、
腎臓に負担をあまりかけずに尿素窒素のもとがでにくいといった特徴があります。

水分、タンパク質、塩分をどんなに気にしてみても、
おやつの量が多すぎて、三度の食事量が減り、
必要な栄養素が不足してしまっては意味がありません。

一日におやつで摂取できるエネルギーは、
100~200kcalまでに抑えるようにしましょう!

血糖コントロールも大切ですので、
糖尿がある場合は100kcalまでに抑えるようにしましょう。

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