2024年3月5日

糖尿病は心筋梗塞発症リスクを上げる

心臓の病気と聞けばすぐに命に関わることと当然のように認識されています。 糖尿病は膵臓に関わる病気であって心筋梗塞とは直接は結び付かないように思われますが、実は大きなかかわりを持っています。 恐ろしい心筋梗塞だからこそ病気を知り、予防を心がけましょう。

糖尿病では毎日の血糖コントロールを行っていくとともに、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症の3大合併症にならないように気を付けて行くことが基本的な治療となります。しかし糖尿病は血管障害を起こすことを前提に考えると3つだけにはとどまりません。血管障害のなかでも最も注意しなければならない心筋梗塞について症状や対処法を見ていきましょう。

そもそも心筋梗塞とは

改めて心臓はどんな役割を持っているか考えて見てください。難しいことはわからなくても命の幹となることは当然のように頭に浮かぶでしょう。心臓は全身を駆け巡ってきた古い血の静脈を受け、浄化された動脈を全身へ送り出すという血液の交換所です。また心臓が収縮と拡張を繰り返すポンプの動きをしなければ血液はストップしてしまいます。

この心臓の筋肉を動かすためには酸素や栄養が必要となりますが、毛細血管からそれらを取り込みながら心臓の筋肉を維持しているのが「冠動脈」と言われるものです。冠動脈は心臓を守るかのように心臓を取り囲む形で存在しています。

心筋梗塞とはこの冠動脈の血管内が詰まってしまう病気のことです。
冠動脈が詰まってしまうと、酸素も栄養分も心臓の筋肉に与えられなくなるため、心臓の組織が死んでしまいます。これを壊死といいます。心臓の筋肉が通常通り動かなくなると直接的に死につながることになります。

糖尿病が心筋梗塞を合併しやすくなる理由は?

糖尿病から心筋梗塞合併はどのくらいの割合か

実は心筋梗塞を患う日本人はそれほど多くはありませんでした。日本の食生活の内容が変わり豊かになってきたことが原因で、肥満と診断される人が多くなり、それが引き金となって糖尿病や心筋梗塞といった病気の罹患率が高くなってきました。

糖尿病を持っている人は、持ってない人に比べて心筋梗塞になる率が2~4倍、糖尿病境界型(糖尿病症候群)でも1.5倍以上という結果が出ています。

理由は動脈硬化

コレステロール自体は水に溶けない脂です。血管内を流れる脂を水に溶ける成分のタンパク質が囲い込んでしまい「リポ蛋白」という形になります。このリポ蛋白に血管を流れるぶどう糖が付着して更に力を高めます。こうしてできた物質は粥のように、やや粘度を持つドロッとした形状になり「プラーク」と呼ばれます。

血管の内壁にプラークがへばりつくと、血流とともに運ばれてきた別のプラークがその上に引っかかり、どんどん蓄積されていきます。蓄積された結果、血管を塞ぐことになってしまします。しかし蓄積することで詰まるだけではなく、このプラーク自体の性質も問題を起こします。

プラークは一定の大きさになってしまうと突然破裂し、破裂した物に血小板というものが集まってしまい血栓という塊となって一気に血管を塞ぐことがあるのです。
こうして引き起こす症状が急性心筋梗塞の発作にあたります。

糖尿病ではコレステロール値が高くなくても動脈硬化になりやすい

糖尿病ではないけれどコレステロール値が高いという人は動脈硬化につながりやすい。これは周知されていますが、コレステロール値はさほど高くないのに糖尿病というだけでリスクが高くなるのはどうしてでしょう。その理由は「活性酸素」にあります。

①高血糖により血液内にはぶどう糖が多数、これが血管壁に付着

②タンパク質とぶどう糖が結合して形を変える=「活性酸素」

③血管内の細胞が活性酸素の働きによって炎症を起こす

④炎症をおさえるため白血球が寄り集まって来る

⑤白血球は「マクロファージ」という形に変化し、血中のコレステロールを呼び寄せる

⑥マクロファージは炎症部分にプラークをこびりつかせる

⑦動脈硬化

⑧心筋梗塞

心筋梗塞の症状はこれ!

こんな症状があるときは病院へ

胸の痛みが出現しますが痛みの部分はある一点ではなく広範囲なもので、チクチクした刺すような痛みではなく圧迫されるような力強い痛みとなります。
また胸の痛みは、運動している最中ではなく安静時がほとんどで、15分以上持続すると心筋梗塞の可能性が高くなります。
胸の痛みのほかには呼吸困難、吐き気、不整脈、冷や汗、肩や背中の痛み、左手小指の痛み、奥歯の痛みなどもあります。

痛みをともなわない心筋梗塞もある

胸の痛みが特徴である心筋梗塞にも「無痛性心筋梗塞」といわれるものがあります。
糖尿病を患っている人や高齢者に多いのが特徴です。
理由は糖尿病の合併症である「神経障害」です。神経障害とは高血糖により糖の処理がしきれずにソルビトールという物質に変化してしまい、神経細胞に蓄積し知覚を鈍くさせてしまうものです。心筋梗塞の痛みも神経の障害で自覚症状として現れなければ、発見が遅くなり死に至る要因ともなります。
原因不明のだるさやしびれ、めまい、吐き気などの症状が出た時は早急に医療機関を受診しましょう。

予防は血糖コントロールとプラスα

心筋梗塞の予防は動脈硬化の予防となりますが、多くは糖尿病における血糖コントロールのための生活と重なります。体重管理から運動療法、そしてカロリー計算を基礎としたバランスの良い食生活。
それに加えて必要な点は4つです。    

●塩分は1日6g以下に抑えましょう
味付けに気を配ることも大切ですし、初めから塩分が多く含まれた市販品を避けるなどの工夫が良いと思われます。(例:ソーセージ1本は0.6g、ロースハム2枚では1g)

●禁煙しましょう
タバコには有害成分が含まれています。この成分が悪玉コレステロールを増やし血流を悪くします。糖尿病で血管は傷つきやすくなっているところに、血流を悪くするリスクがプラスされれば血管は詰まりやすくなる一方となります。

●ストレス解消と十分な睡眠
ストレスや睡眠不足は自律神経を乱します。自律神経のバランスが崩れると血液にも影響を及ぼしてしまいます。活性酸素を発生させたり、血行を悪くすることになりますので、気持ちのリフレッシュやメリハリのある時間の使い方で良い睡眠につなげましょう。

●内服薬の管理
高コレステロール血症などの内服薬が処方されていれば自己判断で内服を中止しないようにすること、また定期的な検診などで自己管理をしましょう。

自分の心臓はどんな状態か知ることが大切

糖尿病から必ずしも心筋梗塞につながるということではありません。しかし一旦心筋梗塞になってしまうと心臓の細胞はほとんど元通りになりません。徐々に進行したり血糖のようにコントロールできる病気ではないので、知識としてある程度は知っておくことが必要となります。
今自分の心臓には異常がないのか知るために、心臓の定期検診を受けること、少しの異常でも感じた時にはすぐに受診することが重要となります。
ちょっとした心がけで自己の大切な命を守りましょう。

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