頑張る栄養くん!~ビタミンB₁₂編~

見えないところでも栄養は頑張ってくれています。 今回はビタミンB12編 ! 貧血などに悩まされたことはありませんか? 私たちの血液に大きくかかわってきています。

ビタミンB₁₂とは?

ビタミンB12は、新しい細胞を作るための遺伝情報を担う核酸と、たんぱく質の合成に必要です。とくに赤血球や神経細胞の合成に深くかかわっていることから「造血のビタミン」と呼ばれています。そのほか、炭水化物や脂質の代謝にも必要とされます。
水に溶け、酸素や光によって壊れやすい性質があります。不足すると貧血や肌荒れ、手足のしびれ、疲労感、記憶障害、うつ、動脈硬化などが生じます。
植物性食品にはほとんど含まれず、また吸収には胃から分泌される「内因子」という糖たんぱく質が必要になります。そのため厳格な菜食主義の人、胃を切除した人、高齢者をはじめとする胃酸が出にくい人などでは不足しやすくなります。

赤血球の合成を促す

球の合成を促す
貧血というと、鉄が不足した「鉄欠乏性貧血」がよく知られていますが、貧血の原因は鉄不足だけではありません。鉄はヘモグロビンとして赤血球の中に取り込まれ、血流に乗って酸素を運んでいます。ですからヘモグロビンの入れ物となる赤血球の異常や不足も、貧血の原因となります。正常な数・形の赤血球を作り出すためには、ビタミンB12、葉酸、ビタミンB6、たんぱく質などが必要になります。葉酸やビタミンB12の不足によって起こる貧血は、巨赤芽球性貧血(大球性貧血)といい、倦怠感やめまいなどの症状があります。ビタミンB12欠乏性貧血は「悪性貧血」とも呼ばれます。

細胞の合成や修復を助ける

DNAは、からだが遺伝情報通りに細胞を作るよう指示を出す物質です。ビタミンB12はこのDNAの合成や、細胞の材料であるたんぱく質の合成にかかわっているため、不足すると正常な細胞が作られなくなります。成人の場合欠乏症状はまず、細胞分裂が活発な場所である粘膜の異常(口内炎、下痢など)となって表れます。

神経の働きを正常に保つ

神経細胞の軸索は、さやに包まれたような形をしています。ビタミンB12はこのさやの合成にかかわり、神経が正常に働くのを助けます。また神経細胞間で情報を伝える神経伝達物質の合成にも必要です。

たんぱく質・脂質・炭水化物の代謝を助ける

私たちが食べ物から摂ったたんぱく質や脂質、炭水化物を利用するには、これらを「代謝」して、エネルギーや身体の成分といった、人間に必要な形に作り変えなければなりません。ビタミンB12はこれらの代謝にかかわって、エネルギーやさまざまな物質の合成を助けます。

動脈硬化を予防する

ビタミンB12、葉酸、ビタミンB6などが不足すると、血液中のホモシステインという物質が増えます。このような状態では動脈硬化や、脳の病気であるアルツハイマー病になる危険が高まるといわれています。さらに動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす原因になります。

欠乏症・過剰症は?

ビタミンB12の欠乏症

ビタミンB12の不足によって起こる代表的な症状は、悪性貧血です。悪性貧血は、舌が赤く肥大し炎症を起こしたり、下痢、息切れ、めまい、動悸、だるさ、食欲不振などが見られます。
また、神経系の働きが悪化して手足のしびれや痛み、集中力の低下、物忘れなどの神経障害が起こります。これらはビタミンB12の投与で回復します。
そのほか、ビタミンB12が不足すると血液中のホモシステイン [※4]というアミノ酸の量が増え、動脈硬化 [※5]の引き金となり、生活習慣病 [※6]のリスクを高めます。

ビタミンB12の過剰症

ビタミンB12は人間の体内では腸内細菌によってつくられ、肝臓にも蓄えられているため、不足することはほとんどありません。
ビタミンB12の吸収は小腸で行われます。ビタミンB12は食品中ではたんぱく質と結合しており、胃の中で消化酵素であるペプシンによって切り離されます。切り離されたビタミンB12が吸収されるためには、胃の細胞から分泌される内因子という糖たんぱく質と結合する必要があります。内因子と結合することによって、ビタミンB12は小腸で吸収されます。このため、胃の切除経験がある方や、胃が萎縮した高齢者の方、胃粘膜に病変がある方、小腸に吸収不全のある方は、内因子が不足していたり吸収する場所がないため、ビタミンB12が不足しやすく、ビタミンB12を静脈内に直接注射したり、サプリメントで補うといった対策がとられています。
また、菜食主義者 (ベジタリアン)もビタミンB12が不足しやすくなります。これはビタミンB12が、基本的に動物性食品にしか含まれていないためです。この場合には、味噌や納豆などの発酵食品から摂取する方法もあります。

ビタミンB12は、余分に摂取しても吸収に必要な内因子の分泌量の範囲内でしか吸収されないため、過剰症の心配はありません。

ビタミンB12の効果

貧血を予防する効果

赤血球をつくる働きを持つビタミンB12と葉酸はどちらも重要で、どちらか一方でも不足すると、細胞分裂や増殖がうまくいかなくなり、貧血が起こります。赤血球のもととなる赤芽球 [※7]が異常に巨大化して (巨赤芽球)赤血球まで成熟できずに死んでしまうことで、正常な赤血球が減る病気を、巨赤芽球性貧血といいます。巨赤芽球性貧血は、鉄の不足が原因の貧血と区別して、悪性貧血とも呼ばれています。
現在では不足しているビタミンB12や葉酸を補給すれば改善することがわかっており、悪性の病気ではありません。

神経機能を正常に保つ効果

ビタミンB12 は、核酸やアミノ酸、たんぱく質の合成を助けることによって、神経細胞の機能を正常に保つ効果があります。DNAの合成には葉酸の働きが不可欠ですが、葉酸がしっかりと働くためにはビタミンB12の働きが必要です。
また、末梢神経が傷つくと、肩こりや腰痛の原因となることがあります。ビタミンB12は末梢神経の傷を治す働きがあり、整形外科では肩こり、腰痛、手足のしびれ、神経痛の治療薬としてビタミンB12が処方されています。

ある研究において、アルツハイマー型認知症の患者の脳では、ビタミンB12の量が健康な人の4分の1から6分の1と少ないという結果が報告がされました。このことからも、ビタミンB12は脳の機能を正常に維持するために重要な役割を担っていると考えられます。そして、末梢神経の障害を修復する作用があることから、ビタミンB12はアルツハイマー型認知症にも有効ではないかと考えられ、研究がすすめられています。【5】【7】

睡眠を促す効果

最近の研究により、ビタミンB12は睡眠・覚醒のリズムに関わっていることがわかってきました。不規則な生活が続くと睡眠・覚醒のリズムが乱れます。ビタミンB12を大量に摂ると、このリズムの正常化に役立つと考えられています。【1】

[※7:赤芽球とは、骨髄の中に存在する血液細胞のことです。赤芽球が細胞分裂を繰り返すことによって赤血球となります。]

ビタミンB12はどのぐらい摂取すればよいか?

各年齢別のビタミンB12の食事摂取基準 (日本人の食事摂取基準2015年版) (シアノコバラミン相当量) は以下の通りです (1) 。

効率よく摂るには

貝類はだしも身も食べる

ビタミンB12は水溶性ビタミンですが、水にそれほどよく溶けるわけではありません。味噌汁の具として親しまれているしじみのビタミンB12は、だしにも流れ出ますが、半分はしじみの身の中にとどまっています。面倒でも身まで食べるようにしましょう。

ほかのビタミンB群と組み合わせる

ビタミンB群は相互に補い合って働くため、ほかのビタミンB群の多い食品とともに摂ったほうが効果的です。

吸収を悪くするのは・・・

ビタミンB12の吸収を阻害するものは以下のとおりである。
① 飲酒
② アミノサリチル酸
③ コレスチラミン
④ コルヒチン(痛風発作改善薬)
⑤ 葉酸を大量に摂取した場合
⑥ メトモルフィン
⑦ ネオマイシン(経口投与のもの)
⑧ H2ブロッカー(ガスター10など)
⑨ プロトンブロッカー(胃酸抑制剤)
⑩ フェンモルフィン
⑪ フェノバルビタール(睡眠導入精神薬)
⑫ フェニトイン(てんかん治療薬)
⑬ カリウムの過剰摂取
⑭ プリミドン
⑮ 喫煙
⑯ ビタミンB6不足
⑰ ビタミンCを大量(2000mg/日以上)摂取した場合

こんな人は専門家に相談を!

ビタミンB12の吸収を妨げる薬がいくつかあるので、特に胃酸過多の人、痛風の人、睡眠導入剤を処方されている人は担当医に相談しましょう。

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