2023年5月15日

頑張る栄養くん!~脂質編①~

見えていないところでも栄養は頑張ってくれています。栄養素の基礎を理解して毎日の献立作りに役立ててください。今回は脂質編です!

脂質とは?

脂質は肉の脂や植物油、コレステロールなどの主な成分で、炭水化物やたんぱく質とともに3大栄養素といわれています。身体の主要なエネルギー源になるほか、細胞膜やホルモン、体の仕組みに働きかける生理活性物質の材料になるといった重要な役割があります。余った脂質は中性脂肪として主に脂肪細胞に貯蔵されます。不足すると、疲労しやすくなったり免疫力が低下したりするため、適度な脂質は身体にとって非常に大切です。しかし現在、食生活の欧米化により日本人の脂質摂取量は増え、むしろ摂りすぎによる肥満や脂質異常症、メタボリックシンドローム、動脈硬化などといった生活習慣病が問題となっています。

エネルギーを産生する

食べ物に含まれる脂質は体内で分解され、細胞の中で1gあたり9kcalのエネルギーを産生します。エネルギーは炭水化物やたんぱく質からも作られますが、これらのエネルギー産生量が1g当たり4kcalということと比べると、脂質はエネルギー効率が高い栄養素といえます。

燃料として貯蔵される

使い切れなかった脂質は他のエネルギー源同様、中性脂肪に変えられ、体脂肪として蓄えられます。そのため脂質をとりすぎると肥満や脂肪肝の原因となり、さらに血液中の中性脂肪やコレステロールが増える脂質異常症や、メタボリックシンドローム、動脈硬化、心筋梗塞や脳梗塞などの原因にもなります。

身体を作る成分となる

脂質は細胞膜の構成成分になります。脂質は水を弾くため、細胞の内外に必要以上に水が出入りしないよう作用します。脂質はそのほかホルモンや生理活性物質といった、体の仕組みに働きかける物質の材料にもなっています。このように細胞レベルでも重要な働きをするので、ダイエットだからといって極端に脂質を制限するのは厳禁です。

脂溶性ビタミンの吸収をよくする

ビタミンの中には、水には溶けず油脂に溶けるものがあります。脂質はこれらのビタミンを溶かし込んで、吸収しやすくします。

過剰症、欠乏症は?

脂質が不足すると…

疲労、やせ、肌荒れ、体力低下、免疫能低下、月経異常などが起こりやすくなります。

脂質を摂りすぎると…

肥満、脂肪肝、脂質異常症、動脈硬化などが起こりやすくなります。

脂質はこんな働きをする

脂質は体内で1gあたり9kcalとなり、三大栄養素のうち最も高いエネルギーになります。脂質には体の中でつくることができない必須脂肪酸が含まれており、体の細胞膜の成分やホルモンの材料などになっています。不足すると、発育の障害や、皮ふ炎の原因になったりします。
 さらに、脂質は油脂に溶ける脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・Kなど)の吸収にも役立っています。

どれくらいとったらよいですか

詳しくは年齢によって異なりますが、成人で1日に必要なエネルギーの20~30%ほどを脂質からとるのがよいといわれています。これは1日2,000kcal必要な人では脂質はおよそ55gになります。しかし、食生活の欧米化にともない脂質の摂取量や摂取エネルギーに占める脂質の割合は増加しており、そのことがエネルギー過剰、肥満、生活習慣病の原因になっていることが指摘されています。
 現在、日本人全体の平均脂質摂取状況はおよそ25%であり、ほぼ適量であるといわれています。また、質の面からみた時も、日本人が摂取する牛肉や豚肉などの動物性食品、植物性食品、魚類からとる各脂質の割合は、ほぼ望ましいバランスといわれます。ただし、これはあくまで平均した場合のお話です。国民健康・栄養調査報告によると20歳以上で脂質のエネルギー比率が30%を超えてとり過ぎている人は、男性で約2割、女性で約3割もみられます。これらの人では適正なバランスになるようとり過ぎない注意が必要です。

脂質をとり過ぎないために

脂質のとり過ぎは、ちょっとしたこころがけで改善できます。脂質の量を把握できる便利な方法に、”調理や食べる時に使う油脂”と、食品中の “素材に含まれる油脂”に分ける考え方があります。
 例えば、脂質を1日に55gとる場合、”調理や食べる時に使う油脂”は15gほどが適量の目安です。これは朝食のトースト用バター(うすくぬって1枚に5g)と、昼食または夕食での油料理1食分(天ぷらやフライなど1人前に含まれる油10g)を合計した量にあたります。いつもこれより多いという人はとり過ぎの可能性があります。次に、食品中の”素材に含まれる油脂”をとり過ぎないようにするには、肉の脂身の多い部分や、高脂肪の乳製品をひかえるなどの配慮をしましょう。

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